アカスジチュウレンジ(英語表記)rose argid sawfly
Arge nigrinodosa

改訂新版 世界大百科事典 「アカスジチュウレンジ」の意味・わかりやすい解説

アカスジチュウレンジ
rose argid sawfly
Arge nigrinodosa

膜翅目ミフシハバチ科に属する昆虫日本に広く分布するハチで,バラの害虫として知られる。成虫の体長8mm内外,頭部黒色胸部および腹部は黄褐色で,胸部に黒斑がある。翅は暗色半透明。卵は淡黄橙色,楕円体状。幼虫の体長20mm内外。頭部は黄褐色,体は緑色で背面および側面に毛のはえた小黒斑がある。年3~4回発生で春から秋まで見られる。成虫の雌は,バラの新梢に頭部を地面に向けてとまり,新梢の上方より下方に表皮組織を縦にさき,その間に数十粒の卵を2列に産卵する。孵化(ふか)した幼虫は新梢の先端近くに移動して群生し,摂食時は葉縁に胸脚でまたがり,腹部末端を多少空中に上げ,葉縁より食害して中肋を残す。幼虫は驚くと腹部末端を高くもち上げ,S字状を呈する。バラの新梢に産卵された当初は,産卵痕は黒い線状でちょっとわかりにくいが,孵化期が近づくにつれてはじけるようになり,孵化後は裂傷として残るが,先端部は枯死しない。チュウレンジバチA.paganaは本種に似るが,成虫の場合,胸部が黒色であること,幼虫の場合,頭部が黒色であることにより区別される。習性も酷似する。ルリチュウレンジA.similis英名azalea argid sawfly)は体長9mm内外,体は青藍色。英名のようにツツジ類Azaleaの害虫で,卵は葉縁の裏面に近い組織内に1粒ずつ産みつける。幼虫の摂食状況は前種に似る。なお本属のハチは日本には約20種産する。
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百科事典マイペディア 「アカスジチュウレンジ」の意味・わかりやすい解説

アカスジチュウレンジ

膜翅(まくし)目ミフシハバチ科の昆虫の1種。体長8mm内外,頭部は黒色で腹部と胸部はだいだい色。胸部に黒斑がある。翅は暗色で半透明。日本全土に分布。幼虫は20mm内外で黄白色,バラの葉を食べる害虫として知られ,浅い土中蛹化(ようか)。蛹(さなぎ)で越冬する。成虫は年2〜3回発生。近縁種を含め,チュウレンジバチと通称されることもある。

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