アイサ(読み)あいさ(英語表記)merganser

翻訳|merganser

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイサ」の意味・わかりやすい解説

アイサ
あいさ / 秋沙
merganser

鳥綱カモ目カモ科アイサ属に含まれる鳥の総称。この属Mergusはもっとも潜水性の発達した魚食のウミガモ類で、体はやや長くウの体形に類似し、嘴(くちばし)が細く鋸(のこぎり)状の歯状突起(歯板)がある。北半球に5種、南アメリカに1種クロアイサM. octocetaceusがあり、ニュージーランドにいた1種シマアイサM. australisは1905年に絶滅した。

 日本には3種が知られる。カワアイサM. merganser全長約65センチメートル、北半球に広く分布し、おもに湖に冬季渡来し、阿寒湖では繁殖例がある。雄の頭部は緑黒色で、後頭部が大きいが羽冠にはならない。下面は白色で脂肪性のピンク色を帯び、背は黒く肩羽の内側は白い。雌は頭部が褐色で、後頭部は羽冠をなす。体は灰褐色で、嘴と足は赤い。ウミアイサM. serratorも北半球に広く繁殖し、日本の江湾にも越冬群がみられる。全長約55センチメートル。雄は一見カワアイサに似ているが、後頭部は羽冠をなし、胸に褐色帯がある。雌は前種と区別困難であるが、嘴の羽毛生え際の形で判別できる。ミコアイサM. albellusユーラシア産で、冬鳥として浅い湾や川に渡来する。全長約42センチメートルと、もっとも小形で、雄は白色で胸側などに黒線があり、雌の頭部は褐色、体は灰褐色である。北海道では繁殖例が知られる。そのほか北半球の外国産には次の2種がある。オウギアイサM. cucullatus北アメリカ産の小形種で、雄は後頭部に白地に黒で縁どられた扇状の大羽冠が広がるもっとも美しい種である。コウライアイサM. squamatusはウミアイサに似るが、体のわきに大きい網斑(もうはん)があり、雄に褐色の胸帯はない。ロシア連邦の沿海州ウスリー地方、中国東北地区に特産の希種とされる。

黒田長久


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改訂新版 世界大百科事典 「アイサ」の意味・わかりやすい解説

アイサ (秋沙)
merganser

カモ目カモ科アイサ属Mergusに属する鳥の総称。世界中に7種が知られている。体は細長く,脚は体の後方につき,泳いだり潜ったりするのに適応している。種類によっては90秒も潜水できる。くちばしは細長く,先がちょっと曲がり,縁には鋸歯状の突起が並んでいる。これは魚類をとらえるための適応である。繁殖は,湖沼,河川に沿った森林で行い,巣は岩陰や草むらの中につくられることもあるが,多くの場合大木にあいている樹洞につくり,中で産卵する。

 日本には次の3種が分布している。カワアイサM.merganserは全長,雄は約71cm,雌は約61cm。ユーラシア大陸,北アメリカの亜寒帯以北で繁殖し,冬季にはヨーロッパ南部,アジア南部,アメリカ合衆国南部へ渡る。日本ではおもに北日本に冬鳥として渡来するが,北海道では繁殖するものがいる。海上よりも淡水の湖沼を好む。ミコアイサM.albellusは全長,雄は約44cm,雌は約38cm。ユーラシア大陸の亜寒帯以北で繁殖し,温帯地方で越冬する。日本ではおもに冬鳥だが,北海道では繁殖するものがいる。ウミアイサM.serratorは全長,雄は約59cm,雌は約52cm。ユーラシア大陸および北アメリカの亜寒帯~寒帯で繁殖し,冬には北半球の温帯地方へ渡る。日本では冬鳥として渡来し,海岸で見られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイサ」の意味・わかりやすい解説

アイサ
mergansers

カモ目カモ科のウミアイサ属 Mergus,オウギアイサ属 Lophodytes,ミコアイサ属 Mergellus の鳥の総称。この 3属の鳥は現生種が全部で 6種あり,以前はアイサ属 Mergus に含まれ,この属の鳥がアイサと呼ばれていた。今日ではそのうちの 4種が和名をウミアイサ属として同じ属名で分類され,ミコアイサとオウギアイサは,それぞれ独立した属に分類されている。大部分が北半球に分布する海ガモ類(→潜水カモ類)で,が鋸歯状になっている。日本にはウミアイサカワアイサコウライアイサ,ミコアイサが分布している。(→ガンカモ類

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百科事典マイペディア 「アイサ」の意味・わかりやすい解説

アイサ

ガンカモ科アイサ属の鳥の総称で日本には4種。カワアイサは最も大きく翼長26cm,ウミアイサは24cm,ミコアイサは19cm。いずれもユーラシアや北米の亜寒帯と温帯で繁殖し,日本へは冬鳥として渡来し,潜水して魚をとる。カワアイサとミコアイサは湖や川に,ウミアイサは海にすむ。北海道では少数繁殖する。コウライアイサはまれな冬鳥として渡来する。

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