ろう(読み)ロウ(英語表記)wax

翻訳|wax

デジタル大辞泉 「ろう」の意味・読み・例文・類語

ろう[助動]

[助動][〇|〇|ろう|ろう|〇|〇]《推量の助動詞「らむ」の音変化》活用語終止形連体形に付く。推量の意を表す。…だろう。
「さぞほねこそをれるらうとおもうて」〈虎清狂・鏡男〉
[補説]主に室町時代に用いられた。「ろ」となることもある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ろう」の意味・読み・例文・類語

ろう ラウ【牢・籠ロウ

〘名〙
罪人などをとじこめておく所。ひとや。獄舎。牢獄牢屋
※能因本枕(10C終)一五七「ろうのをさ」 〔釈名‐釈宮室〕
② 牛や馬を入れておく所。また、けものを入れるおり。〔書言字考節用集(1717)〕 〔詩経‐大雅・公劉〕
③ いけにえにする獣の肉。また、食物。
※三教指帰(797頃)上「同牢、同尊、合、合体」 〔国語‐斉語〕
④ (形動タリ) かたく、くずれにくいこと。確固としていて動かしがたいこと。また、そのさま。堅牢牢乎
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七「此頑固は本人にとって牢として抜くべからざる病気相違ない」 〔史記‐外戚世家〕

ろう らう

〘助動〙 (活用は「◯・◯・ろう・ろう・◯・◯」。推量の助動詞「らむ」の変化したもの) 活用語の終止形に、ただしラ変活用には連体形に付いて、推量の意を表わす。…だろう。
※米沢本沙石集(1283)三「得たらば得ざらまし、賢く得ざりける、けうに得ざるらうにとこそとき給はめ」
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)八「人がみるらうとて不平なぞ」
[補注]「ろう」以外の活用形はなく、完了の助動詞「つ」に付いた「つろう」、推量の助動詞「うず」に付いた「うずろう」の例がかなり多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ろう」の意味・わかりやすい解説

ろう
ろう / 蝋
wax

一価アルコール(ときには二価アルコール)の脂肪酸エステルで、ワックスともいう。しかし名称では、習慣上、この化学的な区別に準拠しないものがある。たとえば、抹香鯨油(まっこうげいゆ)は脂肪油ではなくて液体ろうであり、木ろうはろうではなくて脂肪である。ろうは、液体ろう、動物性固体ろう、植物性固体ろうに分類される。

[福住一雄]

液体ろう

液体ろうは少数で、抹香鯨油、槌鯨(つちくじら)油はこれに属する。

 抹香鯨油は、マッコウクジラの頭蓋(とうがい)中の脂肪様物質を冷却して析出する固体(鯨(げい)ろうという)を除去して得られる液体ろうである。セチルアルコールおよびオレイルアルコール脂肪酸エステルが主成分。酸敗しにくく、温度変化による粘度変化が小さく、精密機械の潤滑油として用いられる。また、けん化して得る高級アルコールは合成洗剤の原料となる。槌鯨油の性状、用途は抹香鯨油と似ている。しかしオレイルアルコールの含有量が多く、70%以上に達する。

[福住一雄]

動物性固体ろう

鯨ろう、みつろう、イボタろう、羊毛脂などがある。

 鯨ろうは、抹香鯨油およびツチクジラの脳油を冷却して得た析出物を分離して採取する固体ろうである。みつろうは、ミツバチの巣から蜂蜜(はちみつ)を採取した残渣(ざんさ)を加温圧搾あるいは溶剤抽出して得られる暗赤色あるいは暗褐色固体である。

 イボタろうは、イボタノキの寄生虫イボタロウムシが分泌する黄色を帯びた白色固体物質である。融点80~83℃。主成分はセロチン酸セリル。つや出し料などに使用される。羊毛脂は、原毛の精練液に無機酸を添加して得る粘着性物質である。精製したものをラノリンと称する。

[福住一雄]

植物性固体ろう

植物の幹、葉、果皮などの表面に広く分布しているが、量は少ない。カーナバろう、モンタンろうなどがある。

 カーナバろうは、ブラジルに産するカーナバ樹(ロウヤシ)の葉の上に析出する帯黄緑色のろうである。もっとも固いろうとして知られている。不けん化物55%程度。主成分は炭素数26~34のアルコールおよび脂肪酸からなるろうエステルである。その硬度を利用して、つや出し料やラッカーなどに用いられる。モンタンろうは、褐炭から得られる黒色のろうである。つや出し料として用いられる。

[福住一雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ろう」の解説

ろう
ロウ
wax

一般には,脂肪酸と高級一価アルコールの固形エステルをいう.しかし,マッコウ鯨油のように化学的組成からはろうに属するにもかかわらず,常温で液状であるために油というものもあり,また木ろうのようにグリセリドでありながら,外観がろうに似ているのでろうとよぶものもある.エタノール,クロロホルムなどに可溶,水に不溶.ろうは大別すると次のようになる.

このほかに,石油精製プロセスで分離されるパラフィン分を主体とした石油ろうとよばれるものがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ろう」の意味・わかりやすい解説

ろう
wax

脂肪酸と高級一価アルコール類とのエステル。ろうはその性状から固体ろう,液体ろう,また出所により動物ろう,植物ろうに区別される。ろうは水に不溶,クロロホルム,熱アルコールに可溶であるが,脂肪よりも加水分解を受けにくく,安定であり,空気中で変質しにくく,細菌にも侵されない。サイジング,ろうそく,医薬,香料原料に用いられる。例として蜜ろう,いぼたろう,鯨ろうなどがある。普通,ろうと呼ばれている木ろうや原油から製造されるパラフィンろう (石ろう) は,成分的にはここでいうろうと異質のもので,前者は融点の高い油脂であり,後者は固体炭化水素である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ろう」の解説

ろう

 化学物質としては脂肪酸と高級アルコールのエステルで常温で固形状のものをいうが,より広く類似の物性を示すもの,例えば炭化水素,高級アルコール,合成高分子化合物などもろう,ワックスとよばれることがある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android