ゆっくり地震(読み)ユックリジシン(英語表記)slow earthquake

デジタル大辞泉 「ゆっくり地震」の意味・読み・例文・類語

ゆっくり‐じしん〔‐ヂシン〕【ゆっくり地震】

スロー地震

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゆっくり地震」の意味・わかりやすい解説

ゆっくり地震
ゆっくりじしん
slow earthquake

地震動周期通常の同規模地震に比べてはるかに長い地震。低周波微動や、さらに周期の長い超低周波地震、地震動を伴わずにゆっくりしたすべりが続くスロースリップ総称。スロー地震ということもある。沈み込み帯での大地震の震源域は30キロメートルよりも浅いところにあるが、多くのゆっくり地震はこの大地震の震源域のすぐ下のプレート境界でおきている。低周波微動とは、P波S波が判然としないきわめて微弱な震動を継続的に発生するゆっくりとした地震であり、活動継続時間は数時間から数週間に及ぶことがある。超低周波地震は、これよりもっと周期の長いゆっくりとした地震である。スロースリップとは、地震波を放射しないさらにゆっくりとしたすべりのことをいい、継続時間が数日のものを短期的スロースリップ、数か月から数年に及ぶものを長期的スロースリップとよぶ。通常の地震の際のずれの速度は、毎秒0.5~1メートル程度であるが、スロースリップについてのずれの速度は、活動継続期間全体で平均して、1年間で数センチメートルから数十センチメートル程度である。短期的スロースリップと低周波微動は、時間的・空間的に同期して発生することも多い。また、短期的スロースリップと低周波微動は、潮汐(ちょうせき)変化や他の地震により放射された表面波により誘発されることもある。これは、これらの現象が、わずかな応力変化に対して非常に敏感であることを示唆している。

 ゆっくり地震の発生する場所周辺は、圧力の高い流体の存在が指摘されており、発生への関与が疑われている。

[山下輝夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「ゆっくり地震」の解説

ゆっくり地震

震源域から放出された地震波の周波数分布が、通常の地震よりも低周波側(長周期側)に偏っている特異な地震。低周波地震(low‐frequency earthquake)、スロー地震、ぬるぬる地震、サイレント地震とも呼ばれる。原因の1つに、ゆっくりとした断層運動があげられる。揺れの強さの割に著しく大きな津波を発生させる津波地震も、その1つと考えられている。規模の大きな余震は、時に二次災害を起こす。

(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android