もんぺ

精選版 日本国語大辞典 「もんぺ」の意味・読み・例文・類語

もんぺ

〘名〙 主に農村漁村で用いられる下衣の汎称で、山袴(やまばかま)のこと。はかまの形をして足首のくくれている、ももひきに似た形の衣服。第二次世界大戦中には都会婦人も着用した。ももひき型、たっつけ型、裾細型、軽衫(かるさん)型など種々の形態がある。もっぺ。もんぺい。《季・冬》
風俗画報‐二六号(1891)漫録「紺太布のモンペと云ふを着たり。素足草鞋穿きて」

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デジタル大辞泉 「もんぺ」の意味・読み・例文・類語

もんぺ

山袴やまばかま一種。袴の形をして足首の所でくくるようにした、ももひきに似た労働用の衣服。主に農山村の女性が用いる。防寒用を兼ねる。もんぺい。 冬》「―穿き傘たばさみて子規墓参/虚子

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改訂新版 世界大百科事典 「もんぺ」の意味・わかりやすい解説

もんぺ

山袴の一種。もんぺの名称が全国的に一般化したのは,第2次世界大戦中に婦人標準服の活動衣として着用が奨励されてからである。それ以前は主として東北地方および一部農山村地帯の農民の労働着,あるいは日常の家着として男女にかかわらず着用されていた。語源については不明な点が多く,文献にもあまり見られない。宮本勢助は《山袴の話》(1937)の中で,山形とも米沢の人ともいう紋平なる人物がはきはじめたからとの説があるが,民間語源説にすぎないとしている。しかし現在各地方に残る名称を見ると,モンペ,モッペ,モツクラモッペ,ダフラモンペ,ガフラモンペ,ドフラモンペ,山形モンペマッカ,ユキバカマ,ユキコギなど多様である。《菅江真澄遊覧記》には,雪袴の語が見られ,日良野貞彦の《奥民図彙》には,男女農民のモッヘの着用図が描かれているが,現行のもんぺと同じかどうかはわからない。東北地方でもさして古い時代からの着用ではないらしく,むしろ裁付(たつつけ)や股の割れた股引を古くは〈モッペ〉と呼んで着用していたようである。もんぺは,前後布,左右計4枚の布を用い,後ろ布は前布より5cm内外長くして前後の差をつけ,下半身の動作を楽にしている。後ろ布につける長大な三角襠(まち)が特徴で,この襠によってもんぺ全体が緩やかとなる。材料は,労働着には紺,黒無地,縞などの木綿が多く使われたが,第2次大戦後は大半が絣(かすり)木綿に変化した。日常着としては,絣木綿に加えてサージ,セルなどの毛織物,化繊地も用いられたが,外出用には絹物もあった。しかし,最近ではごく一部の農山村の老婦人に見られるのみである。なお,現行のもんぺは両脇の明きや紐結びでなく大半はズボン式となっている。
山袴
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百科事典マイペディア 「もんぺ」の意味・わかりやすい解説

もんぺ

左右1対の前布,後布からなるゆったりした山袴(やまばかま)の一種。長着の上から着用し,農山村の労働着,女性の作業着,防寒着として着用されてきた。木綿,絹などで作られ,無地のほか縞(しま)や絣(かすり)が多い。第2次大戦中には女性の標準服として奨励され普及した。→軽衫(かるさん)/裁付(たっつけ)
→関連項目国民服

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「もんぺ」の意味・わかりやすい解説

もんぺ

山袴(やまばかま)の一種。「もんぺい」ともいわれ、その形態は地方によって異なる。このことばは裁着(たっつけ)、かるさんのように、古いことばではない。いずれにせよ農山村の労働着であり、とくに服飾構成では欠くことのできないものである。ことに第二次世界大戦中は女子の非常時服として採用され、全国的に普及した。戦争の終結とともにその使用は農山村に限られて用いられたが、現代ではそれもズボンにかわりつつある。

[遠藤 武]


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「もんぺ」の解説

もんぺ

股引(ももひき)や山袴(やまばかま)の一種。本来は,山袴のうちでも股下の裾にまで達する大きな三角形の襠(まち)をもつものを東北地方でモンペ・モンペイなどとよんでいたが,長着の上に着用できるところから,第2次大戦中に女子の標準服に制定され,全国各地に普及して山袴の代名詞のようになった。のちに胴回りと裾にゴムを通し股下に方形の襠をいれたズボンに近い改良形が現れ,短い上衣とくみあわせる着方とともに,女子の仕事着・日常着として定着。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「もんぺ」の意味・わかりやすい解説

もんぺ

労働着として用いられる下体衣。多く農山村における男女が,仕事着に用いる四幅 (よの) 型の山袴の一種。両脚に分れ,腰,膝にゆとりがあり,裾が細く絞られている。木綿,サージなどでつくられ,無地のほか,絣や縞などの柄物もある。東北地方,日本海側,中部地方などの寒冷地でよく用いられたが,第2次世界大戦中は上下二部式標準服の下体衣として,全国的に女性に着用された。

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世界大百科事典(旧版)内のもんぺの言及

【仕事着】より

…男子は頰かぶり,向こう鉢巻をした。第2次世界大戦中には上下二部式標準服の制定により,全国の女性は半ば強制的に下半衣にもんぺを着用させられた。戦後,もんぺはその機能性から農作業着として全国に定着し,とくに関東以西で愛用され今日にいたっている。…

【ズボン】より

…それらは江戸時代を通じて,その機能性からして,まず武家社会に,ついで庶民生活にも広く浸透した。農山村の労働着,防寒着として知られる〈もんぺ〉も,上部がゆるやかで裾がしまったその形式は,外来ズボンの影響をうけた袴と基本的に一致している。幕末には外国人の軍服の代用として,筒袖と裁付が盛んに着用され,明治以後になると軽衫はもんぺに転化していった。…

※「もんぺ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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