ももんじ屋(読み)ももんじや

精選版 日本国語大辞典 「ももんじ屋」の意味・読み・例文・類語

ももんじ‐や【ももんじ屋】

〘名〙 江戸時代、猪(いのしし)や鹿(しか)などの肉を売った店。また、その人。ももんじいや。〔俳諧・名物かのこ(1733)〕
落語・欲しい物覚帳(1896)〈四代目橘家円喬〉「獣肉(モモンジヤ)の鍋でグズグズ煮られた夢を見た」

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デジタル大辞泉 「ももんじ屋」の意味・読み・例文・類語

ももんじ‐や【ももんじ屋】

イノシシシカなどの獣肉を売った店。ももんじいや。

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改訂新版 世界大百科事典 「ももんじ屋」の意味・わかりやすい解説

ももんじ屋 (ももんじや)

〈ももんじ〉は江戸時代にイノシシ,シカ,タヌキなどの野獣を総称した語で,そうした野獣・野鳥の肉を売り,あるいは食べさせた店を〈ももんじ屋〉といった。獣店(けものだな),獣屋(けだものや)ともいい,江戸には寛文(1661-73)ころから麴町五丁目,のち同所に隣接する平河町にそうした店があり,イノシシ,シカはもとよりキツネ,ネコ,ヤマイヌ,カラス,トビなどまで売っていた。牛馬などの家畜食用にすべきではないとする観念は強かったが,それらも当然売られていたと思われる。薬食(くすりぐい),つまり保健,治病をうたって,店主はその薬効を説いたものらしく,〈けだもの屋藪医者程は口をきき〉(《柳多留》第3編)という川柳がある。また,蕪村に〈くすり喰人に語るな鹿ヶ谷〉の句があるので,京都にも同種の店があったようである。5代将軍徳川綱吉の時代の江戸では獣店の名を避けて,〈麴町の鳥屋〉と通称されていたが,化政度(1804-30)ころから寺門静軒のような肉食愛好派はおおいにその効用をたたえ,それに対して小山田与清(ともきよ)のような保守派は声高にその非をののしった。《守貞漫稿》によると,幕末ころまで江戸の獣肉店は麴町の店1軒だけであったというが,それ以後牛肉の食用が普及するに伴って牛なべ屋や馬肉屋が分化し,現在では野獣肉を食べさせる店のみが〈ももんじ屋〉と称されている。
肉食
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ももんじ屋」の意味・わかりやすい解説

ももんじ屋
ももんじや

江戸時代、イノシシ、シカ、タヌキなどの獣肉(ももんじ)を売る店、またその商人をいう。日本では奈良時代以降、明治初期まで仏教思想の影響から、表面上、肉類を食べることは忌み嫌われていた。しかし、江戸時代には、獣肉を食うことを薬食いといい、養生のためとして食べる者もいた。江戸の両国、四谷(よつや)、麹町(こうじまち)などに獣肉の店があった。ももんじという語は百獣(ももじゅう)の転訛(てんか)という説があり、毛深い化け物などの意味にも用いられた。

[芳井敬郎]

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