もの‐から
〘接助〙 (
名詞「もの」に名詞「から」の付いてできたもの。→語誌(1)) 活用語の
連体形を受ける。
① 逆接を表わす。けれども。ものの。のに。→語誌(2)。
※
万葉(8C後)六・九五一「見渡せば近き物可良
(ものカラ)岩隠りかがよふ玉を取らずは止まじ」
※
徒然草(1331頃)一「いたましうするものから、下戸ならぬこそをのこはよけれ」
② 順接を表わす。ので。ものだから。→語誌(3)。
※
教訓抄(1233)七「只乙
(かなつる)手のさきさきに、目をかけつれば魂はありて見ゆるものから
ともの姿も見ゆるなり」
※俳諧・おらが春(1819)「遊びつかれる物から、朝は日のたける迄眠る」
[語誌](1)「から」を
助詞とする説もある。しかし、
上代・中古において、このような意に用いられた「から」は名詞である。
(2)この語が逆接を表わすことについては、それを「もの」に求める考えと、「もの」を
形式名詞とし、「から」に中心的意義を求める考えとがある。
(3)
平安時代に盛んに用いられた①の
用法は、その後次第に衰え、擬古的な文以外にはあまり使われなくなる。しかも、
中世には②の順接用法が現われ、
近世に至ってはこちらが一般的となる。これは
接続助詞「から」の
影響と考えられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「ものから」の意味・読み・例文・類語
ものから[接助]
[接助]《形式名詞「もの」+格助詞「から」から》活用語の連体形に付く。
1 逆接の確定条件を表す。…けれども。…のに。…ものの。
「月は有明にて光をさまれる―、影さやかに見えて、なかなかをかしきあけぼのなり」〈源・帚木〉
2 理由・原因を表す。…ものだから。…ので。
「莵道の王…みづから宝算を断たせ給ふ―、やんごとなくて兄の皇子御位につかせ給ふ」〈読・雨月・白峯〉
[補説]2は「から」からの類推により中世末に生じ近世擬古文に多く用いられる用法。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例