もう一つの国(読み)モウヒトツノクニ(英語表記)Another Country

デジタル大辞泉 「もう一つの国」の意味・読み・例文・類語

もうひとつのくに【もう一つの国】

《原題Another Country米国小説ボールドウィンの小説。1962年刊。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「もう一つの国」の意味・わかりやすい解説

もう一つの国
もうひとつのくに
Another Country

アメリカの黒人作家ジェームズ・ボールドウィンの小説。1962年刊。行きずりの南部白人女との愛と憎しみの生活に破れて、黒人ドラマーのルーファスは女を精神異常となるまで追い込み、自らも投身自殺を遂げる。この作品の焦点となるのは、生前ルーファスとかかわりをもった白人や黒人が、彼の死因に責任を感じながら、互いに繰り広げる錯綜(さくそう)した異性愛、同性愛の世界であり、性を媒体とした両人種間の人間関係である。現代人の愛に対する渇望絶望が多彩な隠喩(いんゆ)とイメージによって表現されている。作者はこの作品で、性や人種のタブーを乗り越えた場に相互理解の新しい可能性を探り、同時にルーファスの自殺を救いえなかったアメリカ社会の不毛性を批判する。

[関口 功]

『野崎孝訳『もう一つの国』(集英社文庫)』

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