まかしょ(読み)マカショ

デジタル大辞泉 「まかしょ」の意味・読み・例文・類語

まかしょ

江戸時代、白頭巾ずきん白衣を着け、寒参りの代行をするといって江戸市中を巡り歩いた願人がんにん坊主。子供に天神像を刷った紙をいたので、子供らが「まかしょ、まかしょ」とはやしたことからの名という。
歌舞伎舞踊長唄本名題寒行雪姿見かんぎょうゆきのすがたみ」。2世桜田治助作詞、2世杵屋佐吉作曲。文政3年(1820)江戸中村座初演。風俗舞踊化したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「まかしょ」の意味・読み・例文・類語

まかしょ

[1] 〘名〙 願人坊主の一種。宝暦(一七五一‐六四)頃から寛政一七八九‐一八〇一)頃、寒参りの代行をすると称して江戸の町をめぐり歩いた物もらい。頭を白布で包み、腹に荒縄を巻き、一枚の白衣を身につけて帯をせず、鈴を振って勧進した。子どもに天神の像を印刷した小紙片をくばり、子どもたちが「天神様くだせえ、まかしょまかしょ」と追いかけたところから、その通称となったという。
[2] 歌舞伎所作事。長唄。二世桜田治助作詞。二世杵屋(きねや)佐吉作曲。文政三年(一八二〇)江戸中村座初演。三世坂東三津五郎の七変化舞踊「月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)」の雪の部。本名題「寒行雪姿見(かんぎょうゆきのすがたみ)」。「まかしょまかしょ」と叫びながら寒参りする修行者の姿を舞踊化したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「まかしょ」の意味・わかりやすい解説

まかしょ

歌舞伎舞踊の曲名。長唄。本名題《寒行雪姿見(かんぎようゆきのすがたみ)》。1820年(文政3)9月江戸中村座初演。作詞2世桜田治助。作曲杵屋(きねや)和助(2世杵屋佐吉)。振付3世藤間勘兵衛。3世坂東三津五郎七変化(しちへんげ)所作事《月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)》の一。当時の江戸市中を,〈まかしょまかしょ〉と叫びながら札をまき,寒参りを代行する願人坊主(がんにんぼうず)の姿を舞踊化したもの。眼目は〈ちょぼくれ〉とクドキ。また,神おろしの踊り地が傑作の軽快なとぼけた作品。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「まかしょ」の意味・わかりやすい解説

まかしょ

歌舞伎(かぶき)舞踊。長唄(ながうた)。本名題(ほんなだい)『寒行雪姿見(かんぎょうゆきのすがたみ)』。1820年(文政3)9月、江戸・中村座で3世坂東(ばんどう)三津五郎が初演した七変化(へんげ)舞踊『月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)』の雪の部としてつくられたもので、2世桜田治助(じすけ)作詞、2世杵屋(きねや)佐吉作曲、3世藤間勘兵衛振付け。「まかしょ」とは「撒(ま)いてくれ」の訛(なま)りで、江戸市中を「まかしょまかしょ」と叫びながら白衣で走り回った願人坊主(がんにんぼうず)の寒参りを舞踊化したもの。くどき、ちょぼくれのあと、男女間のことを神尽くしで述べたエロティックな箇所もあり、長唄には珍しい軽妙洒脱(しゃだつ)な曲。

[松井俊諭]

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世界大百科事典(旧版)内のまかしょの言及

【猩々】より

…このほか,能の《猩々》に取材した舞踊劇は,江戸時代以来,数多く作られている。1820年(文政3)江戸中村座で3世坂東三津五郎が《月雪花名残文台》七変化の一つとして踊ったものは,真っ赤な《猩々》から真っ白な《まかしょ》に変わる対比が好評であったが,《猩々》のほうは今は伝わっていない。【権藤 芳一】(3)地歌の曲名 竹島幸左衛門作詞,岸野次郎三作曲とされる三下り芝居歌。…

※「まかしょ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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