ひきつけ

改訂新版 世界大百科事典 「ひきつけ」の意味・わかりやすい解説

ひきつけ

ひきつけは俗語としてよく用いられるが,医学用語ではなく,正確な定義はない。人により使い方も異なるが,一般に痙攣けいれん発作とほぼ同意義に用いられている。全身性強直性痙攣の意味合いが強く,また小児に用いられることが多い。

痙攣発作は筋肉の急激な不随意的収縮で,一瞬の収縮(攣縮)を反復する間代性痙攣,数秒~数分間持続する強直性痙攣などがある。全身性痙攣ではふつう,同時に意識が失われる。定型的症状は,急に意識を失い,四肢を強直し(全身を硬くする),目は多く開いていて,眼球は中央に固定するか上転する。この状態が数十秒続き,ついで四肢をぴくんぴくんと動かす動作(間代性痙攣)が2~3分続いておさまる。あとは意識がなく一見眠った状態になるが,呼吸が荒く,喘鳴(ぜんめい)が聞かれる。いったん気がついて(意識が戻る)から再び眠りこむことが多い。尿失禁嘔吐を伴うこともある。また後に一過性の頭痛や一過性の麻痺(トッド麻痺)を残すこともある。発作後しばらく(1~2時間)は精神機能はおちているが,まもなく発作前の状態に戻る。半身の痙攣(片側痙攣)もときにある。このときは,頸が痙攣側に向いたり,眼球が痙攣側に向く(共同偏視)ことが多い。

ひきつけ(痙攣発作)に初めてぶつかると,たいていの人はあわてるが,痙攣は一般に自然におさまるものであるから,不必要な刺激をさけて静かに寝かせる。外傷を防ぐため,近くの危険物を除く。気道分泌物の増加や舌根沈下吐物のため気道がふさがれることがあるので,姿勢に気をつけ(首を横に回すなど),衣服をゆるめて呼吸が楽になるようにする。舌をかむ危険はまったくないわけではないが,発作の起りはじめの短時間のことであり,あわてて物を口に入れると窒息の危険もあり,一般論としてはむしろ入れないほうが無難と考えられている。多くは数分以内におさまるが,まれに痙攣発作が重積状態になることがあるので,10~15分発作が続き,おさまる様子がなければ,救急車などでなるべく早く病院へ連れて行き,発作を止める必要がある。以上のほかに余裕があれば,発作の症状をよく観察しておくと,以後の治療の参考になる。また多くは発作の原因または誘因となる病気があるので,その治療を考える必要がある。

 重積状態とは,痙攣発作が長時間続くか,反復して起こり,発作間欠期に意識が戻らない場合をさし,この状態が続くと生命にかかわったり,重大な後遺症を残すので,なるべく早く止める必要があり,また止まったあとも入院治療が必要なことが多い。

痙攣発作の原因には種々のものがある。脳起源のことが多いが,脊髄起源のものもある。小児期に起こりやすく,なかでも発熱に伴って起こる熱性痙攣が多い。中枢神経感染症,頭蓋内出血頭部外傷など一時的なもののほかに,慢性反復性のものとして,てんかん,代謝異常や脳腫瘍などによる脳病変,泣入りひきつけ(いわゆる癇の強い子どもが激しく泣いたとき,呼吸が止まり無酸素性痙攣発作を起こすもの)などがある。このほかに薬物中毒(ストリキニーネなど),精神的原因(ヒステリーなど)によるものもある。痙攣発作が,明らかな直接原因となる病気がなくて,脳起源の痙攣発作が慢性に反復して起こるとき,てんかんと診断されるが,てんかんの発作は痙攣とは限らず,また小児期を過ぎると自然に治る良性熱性痙攣などとは区別される。

 痙攣と脳病変の関係を調べるために脳波検査が行われる。脳起源の痙攣は,神経細胞の発作性の異常放電に伴うとされ,これは脳波では発作性異常波(棘波(きよくは)など)として認められる。発作中にこれらの異常波は観察されるが,てんかんなど間欠期にも痙攣を起こしやすい状態にあると,間欠期でも脳波上に検出されることが多い。
痙攣 →てんかん
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百科事典マイペディア 「ひきつけ」の意味・わかりやすい解説

ひきつけ

痙攣(けいれん)の俗称。普通は子どもの発作性痙攣をさす。子どもは成人に比べ痙攣を起こしやすく,風邪扁桃炎などの発熱,激しい興奮の際に起こることがある。安静にしておけばなおる。しかし,癲癇(てんかん)や脳炎など重い病気の症候のこともあり,医師の診断が必要。特に発作が繰り返されたり,長びいたり,高熱や意識混濁を伴うときは注意を要する。

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妊娠・子育て用語辞典 「ひきつけ」の解説

ひきつけ

けいれん」のページをご覧ください。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ひきつけ」の意味・わかりやすい解説

ひきつけ

けいれん」のページをご覧ください。

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