はだ焼鋼(読み)ハダヤキコウ

化学辞典 第2版 「はだ焼鋼」の解説

はだ焼鋼
ハダヤキコウ
case-hardening steel

鋼の浸炭焼入れを現場用語ではだ焼きとよび,これに適するように品質を調整された鋼をはだ焼鋼という.機械部品で耐摩耗性が必要な場合は表面硬さが重要であり,また繰返し応力による疲労破壊が問題となる場合は,疲労亀裂が表面からはじまるため表面の強さが重要である.これらの目的で,鋼の表面から1~3 mm の深さまで炭素を拡散浸入させる操作が浸炭である.その後に必ず焼入れをほどこして表面を硬化させるが,心部は焼入れ後も十分な強靭性を保つようにするため,はだ焼鋼にはC約0.2質量% 以下の炭素鋼が用いられる.部品の大きさによっては焼きの入りやすいように,Cr鋼,Cr-Mo鋼,Ni-Cr鋼,Ni-Cr-Mo鋼なども用いられる.品質を重視するため,OやSなどの有害不純物が少なく,マクロ偏析も少ないキルド鋼としてつくられ,大きな荷重を受ける大型歯車などでは浸炭深さを大きくするため,浸炭温度に長時間加熱されても結晶粒が粗大化しないように,Niを添加した鋼がしばしば用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報