はしたない

精選版 日本国語大辞典 「はしたない」の意味・読み・例文・類語

はした‐な・い

〘形口〙 はしたな・し 〘形ク〙 (「ない」は接尾語)
① どっちつかずで、中途はんぱなさま。しっくりしない。
伊勢物語(10C前)一「おもほえず、ふる里にいとはしたなくてありければ、心地まどひにけり」
② きまりが悪くていたたまれないようなさま。間(ま)が悪く、引っ込みがつかないさま。
大和(947‐957頃)一四八「わが様のいといらなくなりにたるを思ひけるに、いとはしたなくて、蘆もうち捨てて逃げにけり」
③ 思いがけないことで、不都合なさま。困惑するさま。迷惑だ。
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「用なき物ども取り出でてけるかな。はしたなし」
④ 慎みがなく見苦しいさま。不作法だ。浅はかだ。みっともない
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「ひといみじきものぞや。さばかり乱れてはしたなかりつるに」
⑤ そっけなく、つれないさま。無情だ。無愛想だ。むごい。
※枕(10C終)一五二「我はた、えはしたなうも言はで見るこそ心もとなけれ」
物事の程度がはなはだしい。はげしい。したたかだ。大したものだ。
源氏(1001‐14頃)松風「松風はしたなくひびきあひたり」
[語誌]語尾の「なし」は語源としては否定意味をもたないが、形容詞「無し」と同形のため、次第に否定的な表現と一般に理解されるようになり、語意が変化した。「今昔物語」などに「无」「無」と記されているところからも、当時の意識がうかがわれる。
はしたな‐げ
〘形動〙
はしたな‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「はしたない」の意味・読み・例文・類語

はした‐な・い

[形][文]はしたな・し[ク]
慎みがなく、礼儀にはずれたり品格に欠けたりして見苦しい。みっともない。「―・い言葉遣い」「些細ささいなことで―・く言い争う」
どっちつかずで落ち着かないさま。中途半端である。
「人の、心とどめ給ふべくもあらず―・うてこそ漂はめ」〈真木柱
間が悪く、恥ずかしい。ばつが悪い。
「―・きもの、異人ことひとを呼ぶに、我ぞとてさし出でたる」〈・一二七〉
自分に向けられる他人言動を、不快に感じたり迷惑に思ったりするさま。
「度々強ひ給へば、―・くてもて煩ふ」〈・若菜下〉
人に対する配慮が欠けるさま。つれない。むごい。
「宮の思ほしたるさまなどを見奉るに、え―・うもさし放ち聞こえず」〈紅葉賀
程度がはなはだしい。ひどい。激しい。
「雨風―・くて、帰るに及ばで」〈宇治拾遺・一〉
布施―・く多くとりて」〈著聞集・一二〉
[類語]見苦しいみっともない下品浅ましいさもしい卑しいあられもないしどけない下種下等低級低俗卑俗野卑低次元猥雑醜悪ほこりっぽい汚いむさくるしい汚らしい小汚い薄汚いけがらわしいばっちいむさい泥まみれ不潔不浄不衛生不純尾籠みすぼらしいぼろいぼろぼろおんぼろよれよれぽんこつ老朽化汚穢おわい汚れ物汚濁けがれよごれ汚点汚染くすむ薄汚れる汚れるすすけるあかじみるまみれる油じみる汗じみる醜態老醜無様ぶざま不格好醜いしゅうばばっちい目障りむさいじじむさいかっこ悪いださい野暮野暮ったい泥臭い不細工田舎臭い不体裁グロテスク不器量弊衣破帽だらしない醜怪見辛い見るに見兼ねる

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