なまみこ物語(読み)なまみこものがたり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「なまみこ物語」の意味・わかりやすい解説

なまみこ物語
なまみこものがたり

円地文子(えんちふみこ)の長編小説。1959~61年(昭和34~36)、『声』に連載新稿を加え65年中央公論社刊。作者の平安文学への親炙(しんしゃ)と想像力が生んだ架空の『生神子(なまみこ)物語』を枠組みとして、一条(いちじょう)天皇中宮定子(ていし)の誇り高い恋と死を描く。政治に悪用された姉妹のなまみこが、定子の生霊によって逆に追放される設定で、摂関政治の被害者という旧来の定子像を覆した。文体は優美で強く、構成は精巧で緻密(ちみつ)。女流文学賞受賞作。

竹西寛子

『『なまみこ物語』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例