薯蕷汁(読み)とろろじる

精選版 日本国語大辞典 「薯蕷汁」の意味・読み・例文・類語

とろろ‐じる【薯蕷汁】

〘名〙 ヤマノイモの根をすりおろして、すまし汁などをまぜたもの。とろろ。《季・秋》 〔日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「薯蕷汁」の意味・読み・例文・類語

とろろ‐じる【薯蕷汁】

ヤマノイモなどをすりおろして調味したもの。 秋》「―吾によはひの高さなし/誓子
[類語]汁物吸い物あつもの澄まし汁お澄ましつゆお付け味噌汁おみお付け粕汁納豆汁薩摩汁けんちん汁豚汁三平汁のっぺい汁鯉濃こいこく水団すいとん

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改訂新版 世界大百科事典 「薯蕷汁」の意味・わかりやすい解説

薯蕷汁 (とろろじる)

ジネンジョ,ツクネイモなどのヤマノイモ類をおろし,みそ汁やすまし汁ですりのばした料理。〈言伝(ことづて)汁〉という異称があるが,これはとろろ汁で食べると飯が進むため,〈飯(いい)やる〉を〈言いやる〉にかけた呼名だと《醒睡笑(せいすいしよう)》は書いている。吸物味に仕立てると〈吸いとろ〉,濃いめの味にして麦飯にかけて食べるのを〈麦とろ〉と呼び,薬味にはアオノリを使うことが多い。芭蕉の句にある東海道丸子(まりこ)宿(現,静岡市駿河区)のとろろ汁,壬生(みぶ)狂言演目の一つにもなっている京都山端(やまばな)(現,左京区)のとろろは,古くからの名物であった。とろろ汁の調理法を記載した文献では江戸初期の《料理物語》(1643)が古く,それによると,アオノリをヤマノイモとすりまぜてみそ汁でのばし,薬味にはコショウがよいとしている。室町後期には行われていたものと思われ,《多聞院日記》天正10年(1582)11月27日条その他に〈とろろ〉の語が散見される。

 料理用語としての〈とろろ〉はそれよりやや古く,室町中期の《新撰類聚往来》に〈鯛(たい)とろろ〉というのが見える。《庖丁聞書》(室町末期)によると,これはタイをあぶって身を細かくむしり,冷たいみそ汁に入れたもので,鳥肉を用いて同じつくり方をする〈鳥とろろ〉という料理もあった。1800年(寛政12)刊の《万宝料理秘密箱》第2編には〈とろろあわび〉というのがある。アワビすり身にしてみそ汁ですりのばすもので,ジネンジョを加えてもよく,アオノリを入れるとなっている。
ヤマノイモ
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「薯蕷汁」の解説

とろろじる【薯蕷汁】

とろろいもをすりおろし、調味しただし汁でのばした料理。飯にかけて食べる。◇「とろろ」と略す。「ことづて汁」ともいう。東海道丸子(まりこ)宿(現静岡県静岡市)のものは芭蕉(ばしょう)の「梅若菜鞠子の宿のとろろ汁」の句に詠(よ)まれ、江戸時代から名物料理として知られる。

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