てんで

精選版 日本国語大辞典 「てんで」の意味・読み・例文・類語

てん‐で

〘副〙 (「てんに」「てんと」などと同源か)
[一] 問題にならないさまを表わす語。
もとから。はじめから。
人情本娘太平記操早引(1837‐39)二「熱けりゃア熱いと点(テン)で断りゃアいい」
② (打消または否定的な表現を伴って) まるで。まるっきり。てんから。
社会百面相(1902)〈内田魯庵〉ハイカラ紳士「てんで歯牙に掛けられない連中さへあります」
[二] 程度のはなはだしいさまを表わすのに用いる俗語。非常に。とても。
青べか物語(1960)〈山本周五郎土堤の夏「おうれ、てんで縹緻(きりょう)あげたじゃねえか、お花」

てん‐で

〘名〙 (「てんでん」の変化した語。多く「に」を伴って用いる) それぞれ。めいめい。各自。各々が同じ動作をするさまにいう。
※天草本平家(1592)三「アカハタ ドモ ヲ tende(テンデ) ni(ニ) サシアゲ サシアゲ ヨッタレバ」
※俳諧・望一千句(1649)六「磯菜つみ蛤ふみつ魚釣つ てんでに籠を持出るなり」

てん‐で

連語引用を示す格助詞「て」に、「いうので」のつまった形「んで」がついた俗語的表現。「ってんで」とも発音する。というので。
※落語・王子の幇間(1889)〈三代目三遊亭円遊〉「乳母(ばア)ヤの乳を飲まして嬢を育てたら怜悧(りこう)に成るってんで」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「てんで」の意味・読み・例文・類語

てん‐で

[副]
(打消しの表現や否定的な意味をもつ語を伴って)まるっきり。まったく。てんから。「てんで相手にしてくれない」「てんでやる気がない」「てんでだめだ」
(打消しの表現を伴わないで)非常に。とても。「この店の料理てんでうまい」
[類語]何等なんら全然全く一向さっぱりまるきりまるで少しもからきしちっとも皆目一切まるっきりとんといささかも毫も微塵も毛頭更更何もなんにも何一つ一つとして到底とても全くもってどだい寸分一寸寸毫毫末夢にも

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