照々坊主(読み)てるてるぼうず

改訂新版 世界大百科事典 「照々坊主」の意味・わかりやすい解説

照々坊主 (てるてるぼうず)

雨天がつづくと,子供まじないとして,白い布を丸めて,目鼻口のない人形を作り,軒先につるす。〈てるてる坊主,てる坊主,あした天気になあーれ〉という唱え文句も伴っている。中国には掃晴娘(そうせいじよう)と称する女の人形を雨乞いのときに作って,晴天を祈る風習があった。日本では,江戸時代に民間で〈てるてる法師〉が作られ,坊主頭にその特徴がある。《嬉遊笑覧》には,〈てるてる法師〉をつるして,もし雨がやめば,目鼻口をつけてお祭りすると記している。西日本地方では,〈日和ひより)坊主〉として白い坊主頭の人形を作るが,逆に雨乞いのときは,黒い坊主頭にしたという。茨城・福島両県では,〈ころり道心〉の名称でよばれ,日乞い,雨乞いのときに使われていた。人形は悪霊をこめて追い出すために用いられたのであるが,坊主頭の形をとるのは,天気祭の司祭者が,旅の僧の聖(ひじり)や修験者であったことを示唆している。かつて日知り=聖の機能に天候の予知と,良い天気を維持する役割が課せられていたことを推測させる。〈てるてる坊主〉は,町場民俗として,子供の遊びのなかに定着しているが,日知り=聖による天気祭の変化した姿とみることができる。
日和見
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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