精選版 日本国語大辞典 「つ」の意味・読み・例文・類語
つ
〘助動〙 (活用は「て・て・つ・つる・つれ・てよ」 下二段型活用。活用語の連用形に付く完了の助動詞)
※土左(935頃)承平四年一二月二七日「かぢとり〈略〉おのれし酒をくらひつれば、はやくいなんとて」
② 動作・作用が完了したこと、またはある行為を実現させることに対する強い判断を表わす。たしかに…する。ぜひ…する。きっと…する。
※万葉(8C後)一八・四〇四〇「布勢の浦を行きてし見弖(テ)ば百磯城(ももしき)の大宮人に語り継ぎ氐(テ)む」
③ ある事実に対する確認の気持を表わす。…た。
※万葉(8C後)一・三〇「ささなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかね津(つ)」
④ 「…つ…つ」の形で二つの動作が並列して行なわれていることを表わす。
※太平記(14C後)一三「夜昼三日まで上げつ下しつ拷問せられけるに」
[語誌](1)語源については、「うつ(棄)」を想定する説がある。一般に完了の助動詞として、「ぬ」と対照されることが多い。上代から中古にかけて、和歌や散文などに広く用いられた。中世以降は日常語には用いられなくなった。
(2)「つ」「ぬ」の違いについては、主に以下のような違いが明らかにされている。(イ)(上接する動詞) 「ぬ」は非意志的、自然推移的動作を表わす動詞につき、「つ」は意志的、人為的動作を表わす動詞につく。(ロ)(上接する助動詞) 「つ」は受身の助動詞「る」「らる」にはつかず、使役の助動詞「す」「さす」につく。一方、「ぬ」は受身の「る」「らる」につくが、使役の「す」「さす」にはつかない。以上のような傾向が認められているが、厳密な法則とまでは言えない。
(3)接続助詞「て」は、「つ」の連用形と形態的、意味的につながるところから、「つ」と同源であった可能性がある。
(4)④の「…つ…つ」の形に固定した用法では、これを「降りみ降らずみ」の「み」、「見たり聞いたり」の「たり」のように並立の助詞として扱うこともある。それまでの段階としては「今昔‐五」の「象を船に乗せて水に浮べつ。沈む程の水際に墨を書て注(しるし)を付つ。其の後、象を下(おろ)しつ。次に船に石を拾ひ入れつ」などのような例もみられる。なお、この用法は「行きつ、もどりつ」などのように現在も残っているが、一般には完了の助動詞「たり」を起源とする助詞(「行ったり、来たり」等)を用いることが多い。
(5)「金刀比羅本保元‐中」の「心のはやるままになまじひなる事はいひちらしつ、伴(ともなふ)者は一人もなし」や「方丈記」の「心、身の苦しみを知れれば、苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ」などは接続助詞として扱う説もある。
(6)近世には「雨月物語‐菊花の約」の「あるじと計りて、薬をえらみ、自方を案じ、みづから煮てあたへつも、猶粥をすすめて、病を看ること同胞のごとく」など「つつ」とほぼ同意になった例も見られる。
(2)「つ」「ぬ」の違いについては、主に以下のような違いが明らかにされている。(イ)(上接する動詞) 「ぬ」は非意志的、自然推移的動作を表わす動詞につき、「つ」は意志的、人為的動作を表わす動詞につく。(ロ)(上接する助動詞) 「つ」は受身の助動詞「る」「らる」にはつかず、使役の助動詞「す」「さす」につく。一方、「ぬ」は受身の「る」「らる」につくが、使役の「す」「さす」にはつかない。以上のような傾向が認められているが、厳密な法則とまでは言えない。
(3)接続助詞「て」は、「つ」の連用形と形態的、意味的につながるところから、「つ」と同源であった可能性がある。
(4)④の「…つ…つ」の形に固定した用法では、これを「降りみ降らずみ」の「み」、「見たり聞いたり」の「たり」のように並立の助詞として扱うこともある。それまでの段階としては「今昔‐五」の「象を船に乗せて水に浮べつ。沈む程の水際に墨を書て注(しるし)を付つ。其の後、象を下(おろ)しつ。次に船に石を拾ひ入れつ」などのような例もみられる。なお、この用法は「行きつ、もどりつ」などのように現在も残っているが、一般には完了の助動詞「たり」を起源とする助詞(「行ったり、来たり」等)を用いることが多い。
(5)「金刀比羅本保元‐中」の「心のはやるままになまじひなる事はいひちらしつ、伴(ともなふ)者は一人もなし」や「方丈記」の「心、身の苦しみを知れれば、苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ」などは接続助詞として扱う説もある。
(6)近世には「雨月物語‐菊花の約」の「あるじと計りて、薬をえらみ、自方を案じ、みづから煮てあたへつも、猶粥をすすめて、病を看ること同胞のごとく」など「つつ」とほぼ同意になった例も見られる。
つ
〘格助〙 体言、または体言に準ずるものを承け、その体言が下の体言に対して修飾の関係に立つことを示す。
※古事記(712)中「浜都(ツ)千鳥 浜よは行かず」
※万葉(8C後)一八・四〇九六「大伴の遠追(ツ)神祖(かむおや)の奥津城はしるく標(しめ)立て人の知るべく」
※更級日記(1059頃)「春ごろ、のどやかなる夕つかた」
[語誌](1)同類の格助詞「の」「が」に比べて用法が狭く、もっぱら連体関係を表示するのみである。その連体関係も、(イ)時間・場所(「夕つ方」「庭つ鳥」)と(ロ)属性(「醜(しこ)つ翁」)の二種類にほぼ限られている。また、「の」「が」が、変遷の過程で主格表示の用法を獲得しながら、現在もなお用いられているのに対して、「つ」は中古以降は複合語の構成要素として認められるにすぎない。現代では「まつげ」(目つ毛)「やつこ」(家つ子)のように一語化したかたちで残る。「つ」の濁音化した形「づ」(「己づから」)および、その音交替形と見られる「だ」(「木(く)だ物」「毛だ物」)はいずれも、語構成要素として用いられるが、これらを含む語は少ない。
(2)次の例によれば濁音化した場合もあったと思われる。「続日本紀‐天平一五年五月・歌謡」の「天豆(ヅ)神 御孫(みま)の命の 取り持ちて」、「十巻本和名抄‐一」の「地神 周易云地神曰祇〈巨支反日本紀私記云久邇豆夜之路〉」など。
(2)次の例によれば濁音化した場合もあったと思われる。「続日本紀‐天平一五年五月・歌謡」の「天豆(ヅ)神 御孫(みま)の命の 取り持ちて」、「十巻本和名抄‐一」の「地神 周易云地神曰祇〈巨支反日本紀私記云久邇豆夜之路〉」など。
つ
〘副助〙 (「ずつ」の変化した語) 量を表わす語に付いて、量的に同一の割合であることを示す。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「爰で本直(もとね)が四貫宛(ツ)も引込アナ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報