ちょぼくれ(読み)チョボクレ

デジタル大辞泉 「ちょぼくれ」の意味・読み・例文・類語

ちょぼくれ

江戸時代大道芸・門付け芸で、願人がんにん坊主などが錫杖しゃくじょう・鈴などを振りながら、祭文さいもん風の歌をうたって米銭をこうたもの。江戸でいい、大坂では「ちょんがれ」といった。ちょぼくれちょんがれ

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精選版 日本国語大辞典 「ちょぼくれ」の意味・読み・例文・類語

ちょぼくれ

※雑俳・幸々評万句合‐安永元年(1772)調二「やり手ばばちょぼくれなどといどみあい」

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改訂新版 世界大百科事典 「ちょぼくれ」の意味・わかりやすい解説

ちょぼくれ

江戸後期に盛んになった大道芸の一つ。また,そのなかでうたわれた俗謡のはやしことばをもいう。橋のたもとや,江戸の両国,上野などの広小路の大道で,手ぬぐいを〈吉原冠り〉にして小さい木魚をたたき,舞をまいながら早口でうたう大道芸である。また願人(がんにん)坊主らが錫杖(しやくじよう)や金錠などを振りながら拍子をとり,あるいは鈴などを持って,早口唄や神降し歌を唱えて,路傍や家々の門口に立って銭を請うたりした。おそらく説経祭文の類より変化してできたものと思われるが,宝暦年間(1751-64)大坂におこって〈ちょんがれ〉と呼ばれ,江戸に移って文政(1818-30)のころ〈ちょぼくれ〉とか〈うかれ節〉といった。歌詞のなかに〈ちょぼりれちょんがれ〉〈ちょぼくれちょんがれ〉といった語があるところから,上方では〈ちょんがれ〉,江戸では〈ちょぼくれ〉と称したのであろう。浪花節前身となったというが,その節の調子が邦楽にとり入れられ,舞踊がついて文化・文政時代に流行した。《女盗賊》《尾張源内》などの古い語りや《お染久松》《小春紙治の紙尽し》など新しい演題を語ったりしたが,卑俗な八八調または七五調文句が多く,なかば踊りながらうたった。川柳にも〈下げ銭でちょぼくれを聞てんば下女〉(《柳多留》39)とある。なかには社会一般の事象や世相を風刺したものがあり,幕末になると政治を風刺したものもでてくるが,皮相なものが少なくない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ちょぼくれ」の意味・わかりやすい解説

ちょぼくれ

祭文(さいもん)の一種で江戸時代後期に流行した大衆芸能。「ちょんがれ」ともいう。詞章の前後に「ちょんがれちょんがれ」「ちょぼくれちょぼくれ」の囃子詞(はやしことば)がついたため「ちょんがれ節」「ちょぼくれ節」といった。語源不詳。早口でしゃべるところに特徴があった。享保(きょうほう)(1716~36)のころに江戸で始まり、1821年(文政4)に大坂でも流行したことが『摂陽奇観(せつようきかん)』にみえる。願人(がんにん)坊主が錫杖(しゃくじょう)を打ち振りながら歌うように語って歩いた。梅亭金鵞(ばいていきんが)の『七偏人(しちへんじん)』に「ちょぼくれちょんがれちゃらまか流」とある。

[関山和夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ちょぼくれ」の意味・わかりやすい解説

ちょぼくれ

江戸時代に盛んであった門付芸 (かどづけげい) の一種。「ちょんがれ」と称して宝永年間 (1704~11) 頃大坂で行われ,のち江戸では「ちょぼくれ」の名で流行した。錫杖 (しゃくじょう) ,鈴などを持って,早口唄や神おろしの文句を唱えて門口に立った。祭文 (さいもん) の読み口が早まったものという説もある。小さな木魚を用いる経文もじりのちょぼくれは,「阿呆陀羅経 (あほだらきょう) 」といわれる。邦楽に入って舞踊化されたものも多い。

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世界大百科事典(旧版)内のちょぼくれの言及

【願人坊主】より

…頼まれた者に代わって神仏への代参や代垢離(だいごり)をする坊主の姿をした門付芸人。近世,おもに江戸で活躍し,藤沢派(または羽黒派)と鞍馬派に分かれ集団的に居住,寺社奉行の支配を受けた。1842年(天保13)の町奉行所への書上には〈願人と唱候者,橋本町,芝新網町,下谷山崎町,四谷天竜寺門前に住居いたし,判じ物の札を配り,又は群れを成,歌を唄ひ,町々を踊歩行き,或は裸にて町屋見世先に立,銭を乞〉とあり,乞食坊主の一種でもあった。…

【浪花節】より

…関西では,明治40年代まで〈うかれ節〉と称した。起源の時期はあきらかでないが,《嬉遊笑覧(きゆうしようらん)》にも,〈ちょぼくれと云ふもの,已前(いぜん)の曲節とはかはりて,文句を歌ふことは少なく詞のみ多し。芝居咄をするが如し。…

※「ちょぼくれ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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