その他の腫瘍

内科学 第10版 「その他の腫瘍」の解説

その他の腫瘍(脳腫瘍各論)

(8)その他の腫瘍
a.髄芽腫(medulloblastoma)
 小脳に発生する腫瘍で,神経外胚葉性の未分化な小型細胞よりなる.全脳腫瘍の約1.2%を占める.小児脳腫瘍の代表的ものの1つであるが,近年減少傾向にある.腫瘍が第4脳室を閉塞し水頭症を併発するため,頭蓋内圧亢進症状で発症することが多い.これに加え,小脳虫部障害による体幹失調をしばしば認める.腫瘍摘出術と放射線治療,さらに化学療法を行う.術後に全脳全脊髄照射を施行することにより,50%以上の5年生存率を得ることができる.
b.血管芽腫(hemangioblastoma)
 良性の腫瘍で,豊富な毛細血管と間質細胞(stroma cell)からなる.成人の小脳に好発し,全脳腫瘍の約2%を占める.孤発例とvon Hippel-Lindau病の一部として発生する場合がある.頭蓋内圧亢進症状,小脳症状で発症するが,一部の症例で多血症を伴う.画像診断上,囊胞形成と著明に造影される壁在結節が特徴的である.手術で病変を摘出することにより,治癒が期待できる.
c.悪性リンパ腫(malignant lymphoma)
 頭蓋内原発の悪性リンパ腫は,ほとんどがB細胞リンパ腫である.全頭蓋内腫瘍の2.7%程度を占めるが,臓器移植後の免疫抑制状態,HIV感染に伴う免疫不全などの増加により,近年その発生頻度も上昇傾向にある.50歳以上に好発し,男性に多い.大脳皮質,基底核脳梁などのテント上に好発するが,1割はテント下に発生する.また,約2割程度の症例では,腫瘍は多発する.腫瘍の発生部位に応じた局所症状を呈するが,頭痛を訴える症例が多い.CT,MRI上,腫瘍の多くは均一に造影される脳実質内病変として描出される.ときに,リング状の造影効果を呈することもあるので,その場合には膠芽腫との鑑別が問題となる.
治療・予後
 一般的には生検などで組織診断を得た後に,放射線治療を行う.放射線治療により腫瘍は一時的には縮小するが,必ず再増大をきたし,その生存期間の平均は約1年である.全身悪性リンパ腫に有効な化学療法を,放射線治療に追加施行することにより,予後が改善するとの報告も多い.[新井 一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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