デジタル大辞泉
「すら」の意味・読み・例文・類語
すら[副助]
[副助]名詞、活用語の連体形、副詞、助詞などに付く。
1 極端な事を例としてあげ、他を類推させる意を表す。さえ。でも。…でさえ。「子供ですら計算できる」「手紙すら満足に書けない」
「言問はぬ木―妹と兄とありといふをただ独り子にあるが苦しさ」〈万・一〇〇七〉
2 「すら」を伴う語からは、ふつう、考えられない、またはあってはならないようなことが起こる意を表す。でも。…なのに。
「しなざかる越を治めに出でて来しますら我―世の中の常しなければうちなびき床に臥い伏し痛けくの日に異に増せば」〈万・三九六九〉
[補説]「すら」は上代に多く用いられ、中古以降は主に歌や漢文訓読文に使われる程度にすぎず、「だに」さらには「さへ」にとって代わられた。中古の末ごろには「そら」という形も用いられている。なお、現代語では「さえ」と同じように使用されるが、「さえ」のほうが一般的で、「すら」の使用は少ない。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
すら
〘副助〙
体言、または体言に準ずるもの、
格助詞「を」、まれに
接続助詞「て」に下接する。…さえ。
① 例外的な
事物を取り立て、一般的な事物を類推させる。この場合、上代には「すらを」の形もある。→
すらを。
※醍醐寺本元興寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「我等在弖須良(スラ)夜此寺将二荒滅一」
② 程度のはなはだしい事物を取り立て、他を類推させる。類推すべき
事柄が「まして」「いわんや」などの副詞に続いて明示される場合もある。
※
万葉(8C後)六・九九五「かくしつつ遊び飲みこそ草木尚
(すら)春は生ひつつ秋は散りゆく」
※地蔵十輪経元慶七年点(883)七「
善趣の二乗の
涅槃をすら退失せられむ。況むや
大乗を得むといふことは」
※
更級日記(1059頃)「ひじりなどすら、前の世のこと夢に見るは、いとかたかなるを」
[語誌](1)上代では「すら」と「だに」との間には明確な
区別があった。「すら」はすでに実現している事物に対して用い、「だに」はまだ実現していない事物に対して用いた。しかし、中古になると、「だに」が「すら」の
用法をも合わせ持つようになり、「すら」は衰退し、類推の
表現には一般に「だに」が用いられるようになった。
(2)中古の漢文訓読文において、「すら」は
後文に「況んや」がある場合に「尚」の
前後で補読されるといわれ、「
スラナホ」という
慣用句もみられるが、
訓点資料においても中古末頃には、一部「だに」にとってかわられるようになる。
(3)院政鎌倉期から一時期「そら」という語形が出現するが、「すら」が現代語でも使用されるのとは対照的に、中世末には使用されなくなる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報