すい(彗)星(読み)すいせい

百科事典マイペディア 「すい(彗)星」の意味・わかりやすい解説

すい(彗)星【すいせい】

太陽系に属する小天体。突如として出現し,大型のものは長い尾を引くので俗にほうき(箒)星と呼ばれ,古来凶兆として恐れられた。今まで知られているすい星は約2100個。毎年十数個発見され,軌道の確認された約1400個のうち,太陽を焦点とする楕円軌道放物線軌道がそれぞれ半数近く,双曲線軌道が約10%。楕円軌道をもつものは一定の周期で太陽のまわりを公転するが,周期200年以下のものは200個以下で,なかには遠日点の距離が10万天文単位(約1.5光年)に及ぶものがある。軌道面も惑星の場合と違って黄道面に大きく傾くものも珍しくなく,惑星の場合と逆向きにまわるもの(たとえばハリーすい星)もある。 すい星はふつう頭部と尾部に分けられ,前者は中心部の明るく輝く核とこれをとりまくコマ(髪の意)からなる。核は直径数十km以下で,質量は地球の1兆分の1程度。主成分は水・アンモニア・メタン炭酸ガスなどの氷で,これにFe・Ca・Mg・Mn・Ni・Al等の金属やケイ酸塩等からなる流星物質がまじった,いわばよごれた氷である。すい星が太陽に近づくと表面がとけてガス微粒子が放出され,平均直径が約10万kmの希薄なコマを作る。その一部は光圧や太陽風に吹きとばされて尾を作る。したがってすい星の尾はいつも太陽と逆の方向に向かい,巨大なものは長さ数億kmに達する。 すい星は太陽に近づくたびに物質の一部を失い,また近くの惑星により軌道を曲げられるため,少しずつこわれ,数万〜数十万年程度の寿命でなくなってしまう。こわれたすい星の流星物質がもとの軌道を飛んでいて流星群を生ずることもある。しかし一方で太陽から1〜2光年離れた空間に膨大な数の原始すい星があり,太陽から数光年の距離を通過する恒星の影響を受けその一部が少しずつ太陽系の中心部へ落ち込み,すい星として出現するものと考えられる。
→関連項目周期すい(彗)星

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