改訂新版 世界大百科事典 「さそり(蠍)座」の意味・わかりやすい解説
さそり(蠍)座 (さそりざ)
Scorpius
略号はSco。夏空の天の川の中に大きくS字を描いて横たわる星列で知られ,黄道十二宮の一つである。ギリシア神話でオリオンを刺し殺したサソリを形どる。α星アンタレスは光度1.0等,スペクトル型M1の赤色超巨星で,距離140光年,太陽の約300倍の直径をもつ。この星から2.″9離れて光度5等,スペクトル型B4の伴星があり,853年の周期で回る実視連星である。アンタレスの名はアンティ+アレス,すなわち〈火星に対する〉という意味で,夏に火星がこの星座で衝の位置にくるときは,この星と火星とがその赤さを競いあうことから由来する。β星は2.6等と4.9等のともにB型の二重星で,アクラブ(アラビア語でさそりの意)の名がある。λ星は光度1.6等のB型星で,尾の先の毒針の左側の星に当たりシャウラ(毒針)の名で呼ばれる。μ星は3.1等と3.6等の8′離れた二重星で肉眼でも両星が分離して見える。散開星団M6,M7,球状星団M4,M80があるが,M4はアンタレスのすぐ近くにあり,小望遠鏡でもすぐ探すことができる。β星の近くにはX線星さそり座X-1がある。概略位置は赤経16h20m,赤緯-26°。午後8時の南中は7月下旬である。
執筆者:石田 五郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報