ご当地グルメ(読み)ごとうちぐるめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ご当地グルメ」の意味・わかりやすい解説

ご当地グルメ
ごとうちぐるめ

地域独自の食材の組み合わせや調理法で他地域との違いを出した料理・飲食物の総称。近年、地域振興の目玉として知られるようになった。静岡県富士宮(ふじのみや)市の「富士宮やきそば」、長崎県佐世保(させぼ)市の「佐世保バーガー」、神奈川県厚木市の「厚木シロコロ・ホルモン」などがよく知られている。「B級グルメ」と称される、庶民的で安価でありながらもおいしい料理である。また、地域振興や町おこしの中核として近年になって創作復刻・命名されたものが多く、その点で伝統的な郷土料理とは異なる。比較的調理法が簡単で、持ち帰り(テイクアウト)できるものが多いというのも特色である。

 2000年(平成12)前後から、全国各地で地元住民有志や商工会議所などが専門団体やNPO法人などを立ち上げ、ご当地グルメを前面に打ち出した観光振興や町おこしに取り組むようになった。地域独自の料理や地元の家庭料理を発掘・命名し、グルメ店の地図、キャラクター、マスコット、応援歌などをつくるケースや、ご当地グルメを提供する屋台村や専門店街などを新たに設立する動きもある。「富士宮やきそば」はご当地グルメによる町おこし活動の成功例で、やきそばの売り上げ増加、メディアでの露出、観光客の増加などによる2001年から2009年の経済波及効果の総額は、地元団体の推計で439億円に上る。2006年以降、ご当地グルメで町おこしに取り組む全国の団体が日本一を競う「B-1グランプリ」(正称は「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」)が毎年開催されるようになり、テレビ・新聞・雑誌で報道され、広く認識されるようになった。2007年には、農林水産省が「農山漁村の郷土料理百選」とともに、ご当地グルメ23品目を「御当地人気料理特選」として選定した。ブームに目をつけた大手食品会社やコンビニエンスストアが、ご当地グルメを商品化して全国で販売したほか、情報サイト大手が全国のご当地グルメを検索できる無料サイトを立ち上げた。ご当地グルメばかりを集めた通販サイトや、ご当地グルメを食べ歩きする旅行商品も登場した。一方で、ご当地グルメとは無関係の地域や企業・個人によってご当地グルメの名称や食品が使われるトラブルも生じている。このため、特許庁地域団体商標制度地域ブランド)の登録条件を緩和してご当地グルメにも同制度を活用し、保護することを検討している。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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