日本大百科全書(ニッポニカ) 「けん化」の意味・わかりやすい解説
けん化
けんか
saponification
以前は油脂、ろうに水酸化アルカリを作用させ、せっけんとグリセリンまたは高級アルコールとを生成する反応のことをさしたが、現在では一般にエステル類が加水分解されてカルボン酸とアルコールになる反応をいうようになった。すなわち、エステル化反応の逆反応のことである。
反応には通常、酸またはアルカリを触媒として用いる。アルカリによる触媒作用は一般に酸に比べて大きいので、アルカリによるけん化がよく行われる。この場合、生成物のカルボン酸は塩の形になるので、溶媒としてアルコールまたはアルコールと水の混合溶媒を用い、アルカリとして水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを理論量の3倍くらい用いて30分から1時間煮沸してけん化させる。酸性におけるけん化は工業的に油脂からグリセリンを製造する場合に行われているが、触媒として用いる希硫酸と油脂とは混合しないので、乳化剤を用いて乳化混合させる。けん化における酸およびアルカリの触媒作用機構、エステルの分解機構については詳しく調べられている。
[篠塚則子]