くさや(読み)クサヤ

デジタル大辞泉 「くさや」の意味・読み・例文・類語

くさや

ムロアジなどを腹開きにし、魚の内臓などを塩漬け発酵させた液につけたあと日干しにした干物。焼くと独特の臭気がある。伊豆諸島の特産。

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精選版 日本国語大辞典 「くさや」の意味・読み・例文・類語

くさや

〘名〙 腹開きにした室鰺(むろあじ)などを、塩辛い漬け汁に、七~八時間くらい漬けてから日に干した干物。漬け汁は古いものほどよいとされ、特有のくさみと風味がある。伊豆諸島などから産する。くさやの干物。
※雑俳・歌羅衣(1834‐44)二「かわく半台・お茶にごすくさや売」

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改訂新版 世界大百科事典 「くさや」の意味・わかりやすい解説

くさや

ムロアジの1種のアオムロクサヤモロ)などで作る干物。腹開きにして内臓を除いた魚を独特の漬汁に一晩漬けてから日干しする。漬汁は濃度10%程度の食塩水であるが,長年にわたって繰り返し使用するため,魚から溶出したタンパク質その他の分解変質によって特有の臭気と味をもつ。くさやの名はこの臭気に由来するもので,江戸時代後期から酒のさかな茶漬の菜として愛好された。元来は伊豆諸島の特産であったが,近年は原料魚の水揚げされる漁港でも製造され,アオムロのほかトビウオマアジ,小型のマサバなどでも作られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「くさや」の意味・わかりやすい解説

くさや

ムロアジ、クサヤモロなどからつくる塩干しの一種。伊豆七島とくに新島(にいじま)の特産品。強烈な臭気を発する。鮮度のよいクサヤモロ、ムロアジ、トビウオなど脂肪の少ない魚を腹開きし、水洗(すいせん)後、くさや汁という塩汁に10時間前後浸漬(しんし)し、水洗して日干しする。くさや汁とよばれる食塩水は反復使用するため、魚体より溶出した可溶性タンパク質、エキス分などに富む。ただし、食塩濃度が8~10%と薄いため、腐敗や発酵がおこり、強い臭気をもつ。臭気成分はフェニル酢酸を主とし、このほか低分子脂肪酸よりなる。くさや汁は食塩が少ないわりにくさやの干物に貯蔵性を与えるのは、くさや汁中に繁殖した細菌の抗菌作用によるとされる。クサヤモロからつくったものが最上とされる。古くから酒の肴(さかな)として好まれ、軽くあぶって、そのままちぎって食べる。

[金田尚志]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「くさや」の意味・わかりやすい解説

くさや

くさやもろ,むろあじなどの魚からつくる塩干しの一種で,伊豆七島の特産物。くさやの発祥地は大島とされているが,むろあじ,くさやもろの好漁場である新島での生産が盛んで,くさや液の改良とその宣伝などにより現在では新島が本場とされている。原料としてくさやもろ,むろあじ,あじ,さば,飛び魚,たかべなどの脂肪の少いものが選ばれるが,特にくさやもろが最上品とされている。魚を腹開きし,水洗,血抜きを行い,くさや液と呼ばれる塩汁に数時間浸漬後水洗いして乾燥させる。特有の臭気をもつが,その臭さがうまみとともに風味のある干物として賞味されている。

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百科事典マイペディア 「くさや」の意味・わかりやすい解説

くさや

ムロアジを開いた干物で,伊豆七島,特に新島の特産。長年貯蔵して使用した濃い食塩水(くさや汁)に7〜8時間浸して干す。特異臭があるが風味が好まれ,酒のさかなとして喜ばれる。臭気の主成分はフェニル酢酸。マアジ,トビウオ等でも作られる。
→関連項目トビウオ

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「くさや」の解説

くさや[加工食品]

関東地方、東京都の地域ブランド。
主に新島・八丈島・小笠原の父島などでつくられる干物の一種。魚醤に似た独自の塩汁に漬け込み、乾燥させてつくる。特有の匂いがあるため、好みが分かれる。使われる魚は、青ムロアジが代表的であるが、他に淡白味のトビウオやサメなどもある。焼くときの匂いが強いため、焼いて骨を取った焼クサヤなどの製品も販売されている。

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日本の郷土料理がわかる辞典 「くさや」の解説

くさや


特有の強烈なにおいをもつ、伊豆(いず)諸島特産のむろあじ・とびうおなどを用いた干物(ひもの)。塩水にむろあじなどの内臓を加え、また繰り返し使用するため魚から様々な成分が浸出して熟成した「くさや汁」に、腹開きにした新鮮な魚を10時間ほど漬け、水洗いして日に干したもの。

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食の医学館 「くさや」の解説

くさや

ムロアジを開いて干した伊豆七島の名産に「くさや」(くさや汁という独特の塩汁につけたあと、乾燥させた干物)があります。
 これにはIPA、ビタミンB群、カルシウムといった、各種栄養素が、濃縮されて含まれており、一年中いつでも食べられる、優れた保存食といえます。
 酒の肴にも最適です。

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世界大百科事典(旧版)内のくさやの言及

【トビウオ(飛魚)】より

…伊豆七島や種子島では,トビウオ漁の地域経済に占める比重がはなはだ大きい。大型のトビウオは鮮魚として出荷されるほか,干物,伊豆七島名産の〈くさや〉などに加工される。東京では4~5月三宅島付近でとれるものを美味としている。…

【干物】より

…調味干しは,みりん干しのように調味液につけてから乾かしたもので,イワシや小型のアジやカレイなどでつくる。ムロアジ,トビウオなどのくさやもこれに属するかもしれない。乾物屋【鈴木 晋一】【平野 雄一郎】。…

※「くさや」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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