日本大百科全書(ニッポニカ) 「がん対策基本法」の意味・わかりやすい解説
がん対策基本法
がんたいさくきほんほう
がん対策を総合的かつ計画的に進めることにより、がん対策のいっそうの充実を図るために制定された法律(平成18年法律第98号)。がん対策に関して基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等および事業主の責務を明らかにし、またがん対策の推進に関する計画の策定とがん対策の基本となる事項を定めている。2006年(平成18)6月に成立し、2007年4月に施行、2016年12月に改正された。
本法成立の背景には、日本におけるがん対策がこれまでの取り組みにより進展し、成果を収めてきたものの、依然としてがんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっているなど、がんが国民の生命・健康にとって重大な問題となっている現状や、がん対策においてがん患者(がん患者であった者を含む)がその状況に応じて必要な支援を総合的に受けられるようにすることが課題となっていることがあげられる。
1981年(昭和56)にがんが日本人の死亡原因の第1位となったことを受け、政府は1984年度より「対がん10か年総合戦略」、1994年度(平成6)より「がん克服新10か年戦略」、さらに2004年度からは「第3次対がん10か年総合戦略」を推進してきた。そして、がん対策基本法が2007年4月に施行され、これを受けて同年6月に「がん対策推進基本計画」が閣議決定された。「がん対策推進基本計画」の10年後の改定となった2017年には、(1)科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実、(2)患者本位のがん医療の実現、(3)尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築、の三つが目標として示された。
[渡邊清高 2018年1月19日]