デジタル大辞泉
「がらり」の意味・読み・例文・類語
がらり
[副]
1 残らず。そっくり。
「山城屋といふくつわへ…命―に身を売りて」〈浄・淀鯉〉
2 即座に。すぐさま。
「それ縛れと言ふや否や、―後ろ手三寸縄」〈浄・兜軍記〉
[名]給料などを前もって全額渡すこと。前払い。
「こなたは乳ぶくろもよいによって、―に八十五匁」〈浮・胸算用・三〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
がらり
[1] 〘副〙 (多く「と」を伴って用いる。古くは「ぐゎらり」「ぐはらり」と表記した例もある)
① 堅い物がぶつかり合って立てる音を表わす語。「からり」よりやや濁った感じがある。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※
婦系図(1907)〈泉鏡花〉後「車はがらりと
石橋に乗懸って」
② そこにあるものを全部投げ出す音、また、物が崩れる音などを表わす語。
※
浄瑠璃・
吉野忠信(1697頃)二「番の
者共はらを立〈略〉小がいな取て引出せど〈略〉ちっ共動く気色なく、
一度にぐ
はらりと投げ倒し」
③ 戸、
障子などを急に勢いよくあける音、また、勢いよくあけ放つさまを表わす語。
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)下「
すきを見合、くぐりぐ
はらりとにげ出る」
※
人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後「破戸
(やぶれど)ぐ
はらりと押あけて」
④ 明るく晴れわたるさま、また、すっかりあけたさま、明るく広々しているさまを表わす語。
※雑俳・伊勢冠付(1772‐1817)「くもり日・グヮラリと寺が明いて居」
⑤
物事、状態が、急にすっかり変わるさまを表わす語。
※絅斎先生敬斎箴講義(17C末‐18C初)「既に
丸木橋を渡れば、
(ひいや)りと気が付て、
大橋を渡るときは、ぐゎらりと窕
(くつろい)で通るは、常人の意じゃ」
⑥ 残るところのないさまを表わす語。すっかり。残らず。
※浄瑠璃・
天鼓(1701頃)三「十二ひとへひの袴ぐ
はらりとぬいでしろむくに」
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈
長与善郎〉竹沢先生の人生観「何しろ〈略〉義理も、家の病人の事も何もかも
一旦がらりと忘れちまふんですから」
[2] がらり板を取り付けた窓、戸など。〔日本建築辞彙(1906)〕
がらり
[1] 〘副〙 (「に」を伴うこともある)
① そっくりそのまま。全部。
※雑兵物語(1683頃)上「鑓をぬくべいと思ったれば、塩首がひっかかって〈略〉がらり鑓をひったくられた」
② 即座に。ひょいと。
※浄瑠璃・壇浦兜軍記(1732)二「それ縛れといふや否やがらり後手三寸縄」
[2] 〘名〙 (そっくり、全部の意から) 一度に先払いで、給金、身請金などを全額前渡しすること。
※浮世草子・好色貝合(1687)下「凡そ色女の給分今は衰えて三百目より八十匁までのがある也。分(わき)て見よいのは、かしらに給銀皆取るをがらりといふ也」
※浄瑠璃・長町女腹切(1712頃)中「がらり廿両、ま一年切まし、居なりに居れば、借金も先づ其分」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報