かっぽれ(読み)カッポレ

精選版 日本国語大辞典 「かっぽれ」の意味・読み・例文・類語

かっぽれ

[1] 〘名〙 「カッポレカッポレ甘茶でカッポレ」というはやしことばのある俗謡に合わせて踊るこっけいな踊り。また、その歌。幕末に起こり、明治中期ごろ全盛をきわめた。豊年踊りあるいは住吉踊りから出たものという。大道芸であったが、歌舞伎の所作事になり、寄席演芸にもなった。
※東京絵入新聞‐明治一八年(1885)一月一〇日「時に両君、僕がステテコやカッポレを船の艗(みよし)でひと踊御覧に入れん」
[2] 歌舞伎所作事。常磐津。河竹黙阿彌作詞。明治一九年(一八八六)新富座初演本名題初霞空住吉(はつがすみそらもすみよし)」。

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デジタル大辞泉 「かっぽれ」の意味・読み・例文・類語

かっぽれ

大道芸の一。江戸末期、住吉踊り影響を受けて願人坊主が始めたもの。明治中期が全盛で、歌舞伎寄席にも取り入れられた。また、その際にうたわれる俗謡。
歌舞伎舞踊常磐津ときわず本名題初霞空住吉はつがすみそらもすみよし」。河竹黙阿弥作詞、5世岸沢式佐作曲。明治19年(1886)東京新富座で9世市川団十郎が初演。

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改訂新版 世界大百科事典 「かっぽれ」の意味・わかりやすい解説

かっぽれ

俗曲,巷間舞踊。俗曲としては文政年間(1818-30)に行われはじめ,幕末に流行した。民謡《鳥羽節》が変化した〈沖の暗いのに……〉が元歌で,曲名囃子詞〈かっぽれ,かっぽれ,甘茶でかっぽれ〉に由来する。幕末の流行に乗じ,願人坊主住吉踊に〈かっぽれ〉ほか俗曲の〈ヤアトコセ〉〈姉(あね)さん本所かえ〉〈深川〉などを交えて踊ったことから〈かっぽれ〉の名で大道芸として流行。1878年ころからは寄席でも踊られ,初坊主や豊年斎梅坊主が得意とした。また宴席幇間芸者の踊としても喜ばれた。これが歌舞伎の所作事にも採り入れられ,89年1月東京新富座で《初霞空住吉(はつがすみそらもすみよし)》の名題で初演された。常磐津。作詞河竹黙阿弥。作曲5世岸沢式佐。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「かっぽれ」の意味・わかりやすい解説

かっぽれ

俗曲。幕末、江戸で願人坊主たちが白の着付浅黄投頭巾(ずきん)、赤緒(あかお)の草履(ぞうり)で、二階傘を立て拍子木をたたいて踊った大道芸。名称の由来は、天保(てんぽう)期(1830~44)に流行した『鳥羽節(とばぶし)』の囃子詞(はやしことば)「わたしゃお前にかっ惚(ぽ)れた」によるものとも、一説にはイタリア民謡「カポーレン」の転訛(てんか)ともいう。大坂・住吉神社の御田植(おたうえ)神事から出た住吉踊「やあとこせ」の流れで、「かっぽれ、かっぽれ、甘茶でかっぽれ」の歌詞を特徴とし、豊年踊に卑俗滑稽(こっけい)な踊りを混ぜたもの。1877年(明治10)ごろから寄席(よせ)にも進出し、十数年間はとくに盛んであった。86年1月、東京新富(しんとみ)座で『初霞空住吉(はつがすみそらもすみよし)』として9世市川団十郎が風俗舞踊化したものが今日に伝わる。

[如月青子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「かっぽれ」の意味・わかりやすい解説

かっぽれ

(1) 大道演芸 文化文政年間 (1804~30) に願人坊主が,白の行衣,墨染の腰衣,浅黄の投頭巾,赤緒草履の姿で花傘万灯を持ち,「やあとこせ」と歌い江戸市中を踊り歩いたのに始る。また住吉踊の流れともいう。明治初期に三味線伴奏により「かっぽれ踊り」と称して浅草に常設小屋を設けて興行し,寄席芸となった。平坊主,梅坊主などの名が知られる。現在は寄席芸のほかに座敷芸として命脈を保っている。 (2) 歌舞伎舞踊曲 大道芸のかっぽれを取込んだ舞踊。常磐津節『初霞空住吉 (はつがすみそらもすみよし) 』 (1886) がいまでも上演されるが,ほかに『栄華の夢全盛遊』 (27) ,『娯浮世機関 (おもしろやうきよからくり) 』 (75) などもある。

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百科事典マイペディア 「かっぽれ」の意味・わかりやすい解説

かっぽれ

俗曲の曲名。活惚れの字を当てる。現行曲は明治末期に成立か。志摩の民謡〈鳥羽節〉を願人(がんにん)坊主たちが豊年踊に結びつけて演じたのが始まり。〈かつ惚れる〉の語からこの曲名と囃子詞(はやしことば)が生れた。陽気な曲調と茶番風な舞踊で有名。

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