かげろう

精選版 日本国語大辞典 「かげろう」の意味・読み・例文・類語

かげろ・う かげろふ

〘自ハ四〙 (名詞かげろう(陽炎)」の動詞化したもの。平安末期から用いられた)
① 光がほのめく。ひらめく。光線がちらちらする。
※金葉(1124‐27)雑下・六三三「いつをいつと思ひ撓みて陽炎のかげろふ程の世をすぐすらん〈懐尋〉」
※俳諧・炭俵(1694)下「とうきびにかげろふ軒や玉まつり〈洒堂〉」
② 姿や幻などが、ちらつく。
※発心集(1216頃か)八「ほのかげにかげろふ物あり。〈略〉盗人なるべし、ここかしこにありきて」
③ 光が隠れて、陰になる。かげる。
※新古今(1205)夏・二六三「よられつる野もせの草のかげろひて涼しくくもる夕立の空〈西行〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「かげろう」の意味・読み・例文・類語

かげろ・う〔かげろふ〕

[動ワ五(ハ四)]《名詞「かげろう(陽炎)」の動詞化》
姿などがちらちらする。ちらっと見える。
敵意の外に、まだ認めなければならない或物が其所に―・った」〈漱石明暗
光がほのめく。ひらめく。 春》ギヤマンの如く豪華に―・へる/茅舎
「松のたえまより、わづかに月の―・ひて見えけるを見て」〈山家集・下・詞書
日がかげる。陰になる。
「秋寒き夕日は峰に―・ひて岡の尾花に風すさぶなり」〈風雅秋上

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「かげろう」の意味・わかりやすい解説

かげろう

かげろうといわれる現象にはおよそ次の三つがあり、それぞれ陽炎、遊糸、蜉蝣または蜻蛉の文字をあてている。

(1)陽炎 光と影が微妙なたゆたいをみせる大気中の光学的現象。たとえば春先など、日当りのよい海岸の砂や屋根瓦(がわら)の上で、空気が暖められて密度分布にむらができるため、そこを通過する光が不規則に屈折させられてこの現象が現れる。たき火を通して遠方のものを見ると揺らいで見えるが、これも陽炎の一種である。水槽に水を張り下方から熱すると、湯の中に不規則な密度差を生じ、この湯を通して反対側を見ると、かげろうのように揺らいで見える。

(2)遊糸 クモが銀色の糸をなびかせながら飛んでいく現象。英語ではgossamerという。日本ではこの遊糸が雪の降る前後に見られるところから「雪迎え」「雪送り」とよぶ地方がある。中国では、遊糸はすべてクモが糸をなびかせて飛んでいく現象をさすが、この用例は5世紀以来多い。日本語では、陽炎の異名としても遊糸が用いられるが、春の季語としては「野馬(やば)」「糸遊(いとゆう)」「遊糸(ゆうし)」「かげろい」などが用いられる。

(3)蜉蝣・蜻蛉 トンボの古名であるが、飛ぶさまが「かげろう」のようにひらめくところからこのようにいわれる。はかなきものの象徴として用いられ、『徒然草(つれづれぐさ)』に「かげろふの夕を待ち、夏の蝉(せみ)の春秋をしらぬもあるぞかし」とある。

[根本順吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「かげろう」の解説

かげろう〔映画〕

1969年公開の日本映画。監督・脚本:新藤兼人、脚本:関功、撮影:黒田清巳。出演:乙羽信子、富山真沙子、吉澤健、戸浦六宏、伊丹十三、草野大悟、殿山泰司ほか。

かげろう〔菓子〕

和歌山県西牟婁郡白浜町にある菓子店、福菱が製造・販売する銘菓。柔らかく焼き上げた洋風生地にクリームを挟んだ洋菓子。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android