お染・久松(読み)おそめ・ひさまつ

百科事典マイペディア 「お染・久松」の意味・わかりやすい解説

お染・久松【おそめ・ひさまつ】

浄瑠璃歌舞伎に登場する人物。1710年大坂油屋の娘お染が丁稚久松と心中した事件は,歌祭文(うたざいもん)にうたわれて評判となり,浄瑠璃《お染久松袂の白しぼり》においてその定型を確立した。近松半二の《新版歌祭文》,菅専助の《染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)》,鶴屋南北の《お染久松色読販(うきなのよみうり)》などが有名。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「お染・久松」の解説

お染・久松 おそめ・ひさまつ

歌舞伎,浄瑠璃(じょうるり)の登場人物
豪商油屋の娘お染は,丁稚(でっち)の久松と道ならぬ恋のはてに心中する。宝永7年(1710)大坂でおきた心中事件が題材。歌舞伎では「心中鬼門角(きもんかど)」「お染久松色読販(うきなのよみうり)」などの外題人気を博した。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のお染・久松の言及

【新版歌祭文】より

…和泉国の侍相良丈太夫の遺児で野崎村の百姓久作に養育された久松が,奉公先の大坂の質店油屋の娘お染との許されぬ恋のために心中するに至るという経緯を主筋とし,それに久松の主家の宝刀の詮議,悪人たちによる金の横領,久松の許嫁お光の悲恋等々のプロットを絡めて展開させたもの。先行する紀海音の浄瑠璃《おそめ久松 袂の白しぼり》や菅専助の《染模様妹背門松》を踏まえて脚色された作品で,お染久松物の代表作となっている。お家騒動的な要素を採り入れた複雑な筋立てが,上の巻〈座摩社〉〈野崎村〉,下の巻〈長町〉〈油屋〉の各場にわたって繰り広げられていくが,その中では,お染・久松の死の覚悟を察知したお光が,2人の命を救うために,それまで楽しみにしていた久松との祝言をあきらめて尼になるという悲劇を山場に構成されている〈野崎村〉の段が最も優れた一幕であり,また,上演頻度も高い。…

【染模様妹背門松】より

…1767年(明和4)12月大坂北堀江市の側芝居初演。お染・久松の心中事件を題材にした作品で(お染久松物),紀海音の浄瑠璃《お染久松袂の白しぼり》を改作したもの。すでに山家屋清兵衛への嫁入りが決まっている質店油屋の娘お染が,丁稚久松との恋を思い切ることができずに,両親油屋太郎兵衛夫婦を初めとして,婿の清兵衛や久松の父久作らの実意にあふれる配慮にも背いて心中を遂げるという経緯が描かれる。…

【野崎観音】より

…春秋2回の無縁経の法会に,大坂方面から野崎参りと称して参詣者が多く,そのとき寝屋川の船路による者と土手の陸路を歩む者が互いにののしり合う奇習があって名高い。〈お染・久松〉(お染久松物)の悲恋物語の舞台としても知られ,いま本堂の後方に,2人の墓が残っている。【藤井 学】。…

※「お染・久松」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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