お夏清十郎(読み)おなつせいじゅうろう

精選版 日本国語大辞典 「お夏清十郎」の意味・読み・例文・類語

おなつせいじゅうろう おなつセイジフラウ【お夏清十郎】

姫路旅籠(はたご)但馬屋の娘お夏手代清十郎とが駈落(かけおち)したが捕えられ、清十郎は処刑、お夏は狂乱した事件題材にした作品通称井原西鶴の「好色五人女」の第一話にとられ、近松門左衛門の「五十年忌歌念仏」で浄瑠璃化された。

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デジタル大辞泉 「お夏清十郎」の意味・読み・例文・類語

おなつ‐せいじゅうろう〔‐セイジフラウ〕【お夏清十郎】

姫路の宿屋但馬屋たじまやの娘お夏と手代の清十郎。寛文2年(1662)ごろ駆け落ちしようとして捕らえられ、清十郎は刑死、お夏は狂乱した。この事件を題材とした作品に、井原西鶴好色五人女」、近松門左衛門「五十年忌歌念仏」などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「お夏清十郎」の意味・わかりやすい解説

お夏清十郎
おなつせいじゅうろう

実在の事件を脚色した歌謡、小説、戯曲の登場人物名。1661年(寛文1)ごろ、姫路の旅宿但馬(たじま)屋の手代清十郎が主家の娘お夏と密通し、大坂かけおちしたが捕らえられて処刑され、残されたお夏は乱心したという。この事件が俗謡「清十郎ぶし」をはじめ、俳諧(はいかい)、歌祭文(うたざいもん)、小説、浄瑠璃(じょうるり)、歌舞伎(かぶき)などの好題材となった。代表的なものは、小説で井原西鶴(さいかく)作『好色五人女』(1686)中の「姿姫路清十郎物語」、浄瑠璃で近松門左衛門の『おなつ清十郎笠物狂(かさものぐるい)』(1705)、『五十年忌歌念仏(うたねぶつ)』(1707)、近松半二、三好松洛(しょうらく)らの『極彩色娘扇(ごくさいしきむすめおうぎ)』(1760)など。明治以後では坪内逍遙(しょうよう)作の舞踊劇『お夏狂乱』が有名で、戯曲にも真山(まやま)青果作『お夏清十郎』をはじめ多くの作品がある。

[松井俊諭]

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百科事典マイペディア 「お夏清十郎」の意味・わかりやすい解説

お夏清十郎【おなつせいじゅうろう】

井原西鶴の《好色五人女》,近松門左衛門の《五十年忌歌念仏》や坪内逍遥の舞踊劇《お夏狂乱》などに登場する主人公の男女。姫路の米問屋但馬(たじま)屋の手代の清十郎は,主人の娘お夏と密通,大坂へ駆落(かけおち)しようとしたが,運悪く捕らえられ,清十郎は大金を盗んだ嫌疑(けんぎ)まで受けて死刑となり,お夏は恋しさのあまり気が狂う。寛文年間の実話を脚色したものとされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「お夏清十郎」の意味・わかりやすい解説

お夏清十郎
おなつせいじゅうろう

井原西鶴の『好色五人女』第1話,近松門左衛門の浄瑠璃『五十年忌歌念仏』 (1709上演) などの主人公で,実在もした,姫路の但馬屋の娘お夏と手代清十郎。万治3 (1660) 年,清十郎は恋仲のお夏と大坂へ逃げたが捕えられ,寛文1 (61) 年死刑になったという。「清十郎殺さばお夏も殺せ」「向う通るは清十郎じゃないか,笠がよく似た菅笠が」など,2人の悲恋は当時のはやり歌にうたわれた。坪内逍遙作詞の舞踊曲に『お夏狂乱』 (1914上演) がある。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「お夏清十郎」の解説

お夏清十郎
(通称)
おなつ せいじゅうろう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
道行比翼の菊蝶 など
初演
天明1.3(江戸・市村座)

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