おろし(料理)(読み)おろし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「おろし(料理)」の意味・わかりやすい解説

おろし(料理)
おろし

ダイコンワサビショウガなどをおろし器でおろすこと、また、おろしたものをいう。単に「おろし」という場合は大根おろしをさす。ダイコンをおろし器でおろしたものは用途が広く、刺身のつけしょうゆに加えたり、そば、うどん、てんぷらなどの薬味に使うほか、和(あ)え物に用いる。おろし和えはみぞれ和えともいい、ダイコンをおろして軽く水けをとり、下味をつけたタコ、イカ、イワシ、エビ、アカガイ、エノキダケなどに添えたものである。おろしを適宜鍋(なべ)に入れて味つけをし、魚や鶏肉などを煮て用いることもある。

 地方料理には大根おろしがかなり大きな役割をもつものが多い。福井県の武生(たけふ)(越前市)のおろしそばは一種のかけそばであるが、大根おろしを加えることにより独自の味を出している。また「ぼっかけ」は、豆腐を奴(やっこ)豆腐の形に切って型どおりの湯豆腐をつくり、大根おろしにしょうゆを適宜加え、飯を茶碗(ちゃわん)に盛り、豆腐を3~4個のせ、上から調味した大根おろしを加えたものである。長野県の「大根しぼり」は、そば料理で、大根おろしの用い方がおもしろい。そばは、ゆでてざるにあげておく。しょうゆ大さじ6杯、砂糖大さじ1杯、削り節少々を鍋に入れ、火にかけ、沸き立ったら、この地方特産の辛いダイコンをおろして適量加える。そばをざるのまま温めて、食べる分だけ取り分け、大根おろし汁をかける。

多田鉄之助

 おろしは、空気に触れると、ビタミンCが酸化され、減少する。おろしてから長く空気に触れるほど酸化もするので、なるべく食べる直前におろすのがよい。また、ダイコンにニンジンのおろしを混ぜたもみじおろしでは、ニンジンに含まれるビタミンC酸化酵素の作用により、ビタミンCの酸化が促進される。この酵素は酸性にすると働きがとまるので、すりおろして時間を置くときは、酢やレモン汁を加えることでビタミンCの減少を防ぐことができる。

河野友美大滝 緑]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android