おくび(英語表記)belching of gas

改訂新版 世界大百科事典 「おくび」の意味・わかりやすい解説

おくび
belching of gas

噯気(あいき),または俗にげっぷともいう。胃内の気体(通常は空気)が口腔を経て体外に逆流する現象。嚥下(えんげ)にともなって若干の空気が胃内に入り,臥位以外ではおもに胃底部に貯留する(これを胃泡stomach bubbleという)。ふつう胃内圧は食道内圧より約10mmHg高いが,下部食道括約筋が収縮して食道出口をしっかり閉じているので胃から食道への逆流はおこらない。食物を摂取して胃が充満していくにつれて胃内圧は上昇するが,同時に上記括約筋の収縮も強くなるので逆流は生じない。このように収縮が増強する原因としては,血漿ガストリン濃度の上昇,括約筋直下部の粘膜に対する酸刺激による反射,胃壁伸展による反射などが考えられている。元来胃の飲食物受容能力は大きく,相当ふくらんでもその割合に内圧は高くならない。しかし,多量の空気の嚥下,胃内での炭酸ガス発生(たとえば炭酸飲料の摂取や重炭酸ソーダ服用)などの場合には,胃内圧は顕著に上昇し,胃泡の下縁は噴門より下にくる。胃内圧が下部食道括約筋の収縮力を上まわると胃から食道への方向に気体が逆流し,胃と食道の内圧は等しくなる。同時に腹筋の収縮による腹圧の上昇が加わると逆流した気体は口から吐き出される。おくびが出たあとも食道内圧は6~10秒間高まったままでいるが,食道壁の伸展によりひき起こされた蠕動ぜんどう)運動で食道内の残留気体は胃内に運びこまれ,下部食道括約筋が閉じるともとにもどる。ふつう以上に空気をのみ込むくせのある人(呑気(どんき)症)の場合は飲食と関係なくおくびを多発する。呑気症は神経質な人や胃疾患時にみられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「おくび」の解説

おくび

 →あい気

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