おあむ物語(読み)おあんものがたり

精選版 日本国語大辞典 「おあむ物語」の意味・読み・例文・類語

おあんものがたり【おあむ物語】

(「おあん」は、庵主(あんじゅ)老尼の意) 一巻。石田三成の家臣山田去暦の娘の追憶談を筆録したもの。関ケ原戦いの際、大垣籠城しそこから脱出した経験、彦根での若い頃の生活の思い出などの記録。女性の目から見た戦争記録として、大坂夏の陣を扱った「おきく物語」と並び称される。享保一五年(一七三〇谷垣守の奥書のある諸伝本があり、刊本は天保八年(一八三七)刊。

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デジタル大辞泉 「おあむ物語」の意味・読み・例文・類語

おあんものがたり【おあむ物語】

《「おあん」は尼の敬称》江戸前期の見聞記。1冊。享保初年(1716)ごろまでに成立か。石田三成の家臣山田去暦の娘が、美濃大垣城で見聞した関ヶ原の戦いのようすを、尼になってから子供たちに語った追憶談の筆録。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「おあむ物語」の意味・わかりやすい解説

おあむ物語
おあんものがたり

江戸中期に筆録された物語。1巻。関ヶ原の戦いに父に従い大垣城に籠城(ろうじょう)していた一女性が、年老いてから当時の体験を物語ったもので、筆録者については名前も明らかでない。この女性は石田三成(いしだみつなり)に仕えた山田去暦(やまだきょれき)という者の娘で、落城寸前に父とともに城を脱出して土佐(高知県)に逃れ、そこで結婚したが、夫に死別してからは甥(おい)に養われ、寛文(かんぶん)(1661~73)ごろ80余歳で死去したという。書名の「おあむ」は御庵で老尼の意味であろう。軽微なものながら、口語史上、参考になることが少なくない。

岡本良一

『杉浦明平著『戦国乱世の文学』(岩波新書)』『湯沢幸吉郎校訂『雑兵物語・おあむ物語』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「おあむ物語」の意味・わかりやすい解説

おあむ物語 (おあんものがたり)

聞書。1巻。石田三成の家臣山田去暦の女が雨森儀右衛門の妻となって土佐に下り,晩年美濃大垣籠城(1600)の体験を追憶した話を筆録した記録。正徳年間(1711-16)の成立といわれる。女性による戦争体験記および武士の家庭生活について語った記録として,また近世初期の国語資料として貴重である。《おあん女咄》《安女戦話》など異名が多い。《女流文学全集》所収
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百科事典マイペディア 「おあむ物語」の意味・わかりやすい解説

おあむ物語【おあむものがたり】

聞書。1巻。正徳年間(1711年―1716年)の成立とされる。石田三成家臣,山田去暦の女(むすめ)(のち雨森儀右衛門妻)の話を筆録したもの。おあむは御庵で老尼の意。1600年の関ヶ原の戦の際の,石田三成の大垣城での体験を回想した話を記録したもの。近世の口語を知るうえで国語学資料としても貴重。

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