うだつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うだつ」の意味・わかりやすい解説

うだつ
うだつ / 卯建

日本建築用語。古くは建物の棟(むね)を支えるため、梁(はり)上に立てられた棟束(つか)を宇太知(うだち)、宇立(うだち)の名でよんでいた。いまでも丹波(たんば)地方(京都府・兵庫県)の古民家では、棟を支える束を「おだち」というが、宇立が転訛(てんか)したものと思われる。建物の妻(側面)ではこの束が直接みえるので、妻の棟束をさすようになり、中世末からは、町屋の妻に屋根より上に突き出す壁ができて、この部分をも卯建とよぶようになった。建物の両妻で軒下につけられた袖(そで)壁をも卯建とよぶことがある。

[工藤圭章]

「梲が上がらない」ということばでよく知られるが、このことばは「いつもいつも上から押さえつけられていて、いっこうに出世できない」「運が悪くてさっぱりよい目が出ない」などの意で用いられる。

 この慣用句は、「梲を上げる」ということばが大工仲間で「家を建て、棟(むね)上げをする」ことをいい、転じて志を遂げることをさすようになったとか、あるいは、京阪地方で、隣家との境に卯(う)の字形防火壁袖壁)をつけ、これを「卯建(うだち)」といったが、この壁をつけた家は格式の高い家なので、転じて立身する意となった、などの説によるものである。

[宇田敏彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「うだつ」の意味・わかりやすい解説

うだつ

建築用語。梁上の短柱,すなわち束 (つか) 。うだち (宇太知,宇立) ともいう。また,妻壁には必ずうだつがあるところから,転じて妻壁をいう。なお,切妻造民家の妻に一段高く屋根をふいたところを本卯建 (ほんうだつ) といい,さらにその下方が軒下に出て袖壁となったものを袖卯建 (そでうだつ) というようになった。元来は家の格を示すものであったが,塗屋造では防火壁になる。

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