うたかたの記(読み)うたかたのき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うたかたの記」の意味・わかりやすい解説

うたかたの記
うたかたのき

森鴎外(おうがい)の短編小説。1890年(明治23)8月『しがらみ草紙』に発表。ドイツ材料をとった、鴎外初期三部作の一つ。日本人画家巨勢(こせ)はミュンヘンでマリイというモデル女に会うが、彼女は以前巨勢が親切にしたことのある花売りの少女で、彼をスタルンベルヒ湖に誘う。ところが、そこで、かつて彼女の母を恋して狂ったバワリア王を見て、マリイは失神して水に落ち、王も水死する。そういう伝奇的物語雅文でつづった作品で、『舞姫』『文づかひ』とあわせた三部作中もっとも浪漫(ろうまん)的な小説である。

磯貝英夫

『『舞姫・うたかたの記』(岩波文庫・角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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