精選版 日本国語大辞典 「あにいもうと」の意味・読み・例文・類語
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室生犀星(むろうさいせい)の短編小説。1934年(昭和9)7月『文芸春秋』に発表。1935年山本書店刊の『神々のへど』に収録。第1回文芸懇話会賞を受賞。多摩川の人夫頭赤座平右衛門一家の野性的な愛情を描いている。赤座はたくましい男で、赤座の蛇籠(じゃかご)というあだ名で知られている。勘定を取り仕切る妻りきは柔和な女で3人の子がある。長男の伊之(いの)は石職工の腕はあるが女のごたごたが絶えない。上の妹のもんは奉公先で学生の子をはらんで捨てられてからぐれだしている。もんの留守に学生の小畑が訪ねてくるが、赤座は怒る気にもなれない。しかし伊之が小畑を殴る。帰ってそれを知ったもんは伊之につかみかかりののしり合う。なお続編に『神々のへど』(改題『続あにいもうと』)がある。
[鳥居邦朗]
『『あにいもうと』(角川文庫)』
室生犀星の短編小説。1934年(昭和9)《文芸春秋》に発表。のちに《神々のへど》(1935)に収録。川師の赤座一家の粗野で素朴な愛を描く。赤座はたくましい人夫頭で,赤座の蛇籠(じやかご)は雪解け水にも流されないと知られている。娘もんは下谷の寺に奉公するうちに学生小畑の子をみごもり死産する。もんの留守に訪ねて来た小畑に,赤座は殴る気にもなれないが,腕のいい石職工でありながら自分も女のごたごたが絶えない兄の伊之が小畑を殴る。それを知ったもんは,兄につかみかかる。ののしりあいぶつかりあう兄妹をはじめ,一家の人々には不器用でむき出しの愛情が流れている。《続あにいもうと》(1934)は,その後のもんの家族を描く。
執筆者:鳥居 邦朗
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