『銭形平次』シリーズ(読み)ぜにがたへいじしりーず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「『銭形平次』シリーズ」の意味・わかりやすい解説

『銭形平次』シリーズ
ぜにがたへいじしりーず

日本映画。原作は、野村胡堂(のむらこどう)の小説『銭形平次捕物控(とりものひかえ)』。1931年(昭和6)文芸春秋発行の『文芸春秋オール読物号』創刊号に掲載された、銭形平次を主人公とする「金色の処女」が『銭形平次捕物控』の第1作となり、以後長編短編あわせて383編が発表されるほどの人気作となる。神田明神下に住む岡っ引きの平次が、子分のガラッ八こと八五郎とともに奇々怪々なる難事件に挑み、鋭い推理と大胆な行動力で鮮やかに解決する。映画では、連載の始まる1931年にすでに、松竹キネマで広瀬五郎(ひろせごろう)(1904―1972)監督、関操(せきみさお)(1884―?)主演の『銭形平次捕物控 振袖源太』がつくられ、以後、嵐寛寿郎(あらしかんじゅうろう)、二代目市川猿之助(いちかわえんのすけ)などを主演に数多の「銭形平次」映画が製作されている。なかでも、1949年(昭和24)に新東宝佐伯清(さえききよし)(1914―2002)監督、長谷川一夫(はせがわかずお)主演の『銭形平次捕物控 平次八百八町』、続く1951年に大映で、森一生(もりかずお)監督、長谷川主演の『銭形平次』がつくられ、長谷川の主演シリーズとして快調にスタートした。監督に森一生、冬島泰三(ふゆしまたいぞう)(1901―1981)、加戸敏(かとびん)(1907―1982)、田坂勝彦(たさかかつひこ)(1914―1979)などがあたり、1961年までに全18本(新東宝1本、後は大映)が製作される。とりわけ、長谷川の翳(かげ)を帯びた男の色香が漂う場面や、「投げ銭」で敵を素早く颯爽(さっそう)と攻撃する場面の対照は見事である。また、ガラッ八役を佐々木小二郎(ささきこじろう)、花菱(はなびし)アチャコ(本名藤木徳郎(ふじきとくろう)、1897―1974)、堺駿二(さかいしゅんじ)(1913―1968)、益田喜頓(ますだきいとん)(1909―1993)、榎本健一(えのもとけんいち)、川田晴久(かわだはるひさ)(1907―1957)、船越英二(ふなこしえいじ)(1923―2007)、三木のり平(へい)(1924―1999)といった多彩な役者たちが作品ごとに入れ替わり、長谷川との会話を歯切れよく喜劇的にみせている。

[坂尻昌平]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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