γ-アミノ酪酸(読み)ガンマアミノらくさん(英語表記)aminobutyric acid

改訂新版 世界大百科事典 「γ-アミノ酪酸」の意味・わかりやすい解説

γ-アミノ酪酸 (ガンマアミノらくさん)
γ-aminobutyric acid

分子式NH2CH2CH2CH2COOH。植物ではジャガイモ根茎,トマトの塊茎,マメ科植物の根粒などに,動物では脳に局在する非タンパク質アミノ酸。略してGABAと呼ばれる。グルタミン酸のα-カルボキシル基の酵素的脱炭酸により作られる。脳ではγ-アミノ酪酸とα-ケトグルタル酸がアミノ酸転移酵素によりコハク酸セミアルデヒドとグルタミン酸となり,クエン酸回路に入り代謝される(GABA回路)。このアミノ酸は,無脊椎脊椎動物の神経系でともに抑制性神経伝達物質として作用している。GABAは抑制性の神経繊維および抑制性の細胞体にのみ高濃度に存在し,かつその合成酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素)活性も高い。シナプス近傍にGABAを投与すると抑制性の神経繊維においてシナプス後膜に電位変化を生じる。さらに抑制性の神経繊維を刺激すると神経終末からGABAが放出される。

 GABAはアミノ酸のなかで神経伝達物質として確定している唯一のものである。神経接合部やグリア細胞はこのアミノ酸を特異的にとりこむ活性をもつことによって,その作用の不活性化を行っていると考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「γ-アミノ酪酸」の意味・わかりやすい解説

γ-アミノ酪酸
ガンマアミノらくさん
aminobutyric acid

化学式 NH2CH2CH2CH2COOH ,略称 GABA 。ピペリジン酸ともいう。ジャガイモの根茎,リンゴ果肉,マメ科植物の根粒,タバコチャの葉,哺乳動物脳髄など,動植物界にかなり広く遊離状態で存在する。無色針状晶。融点 203℃ (分解) 。水に易溶,有機溶媒に不溶。生体内でグルタミン酸から脱炭酸酵素の作用で生じる。神経伝達物質の一つ。

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栄養・生化学辞典 「γ-アミノ酪酸」の解説

γアミノ酪酸

 C4H9NO2(mw103.12).H2N(CH2)3COOH.GABAと略す.神経伝達物質で,抑制性ニューロンの終末でグルタミン酸から合成され,受容体を介して抑制機能を表す.信号伝達経路は,Gタンパク質を介するアデニル酸シクラーゼ系やイノシトールリン酸代謝回転系などが知られている.

γアミノ酪酸

 →γ-アミノ酪酸(p.29)

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世界大百科事典(旧版)内のγ-アミノ酪酸の言及

【筋弛緩薬】より

…適応症として,運動器疾患に伴う有痛性痙縮腰背痛症,変型性脊椎症,椎間板ヘルニア,脊椎分離・辷り症,脊椎骨粗鬆(そしよう)症などがある。 γ‐アミノ酪酸(GABA)は哺乳類の中枢神経系における伝達物質の一つである。脊髄においては,GABAはシナプス前抑制に関与する伝達物質と考えられている。…

※「γ-アミノ酪酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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