α米(読み)アルファまい

改訂新版 世界大百科事典 「α米」の意味・わかりやすい解説

α米 (アルファまい)

米を炊いて飯にすると,デンプンは消化のよいおいしいαデンプンの形になる。αデンプンとは,デンプンに水を加えて加熱し糊化させたもので,X線でみるとその結晶構造が認められないという特徴がある。飯をそのまま放置するとデンプンは徐々に老化してもとの生デンプン(βデンプン)に戻る。α米はデンプンをαのまま固定し,保存できるようにしたものである。一般には精米適量の水とともに100℃以上で炊飯し,温度を下げずに80~130℃で,常圧または減圧下急速に脱水し,水分5%前後に乾燥する。また炊飯せずに蒸煮してα化させる方法,炊飯前に油で処理する方法などもある。さらに最近では新しい特殊加工法も開発されているが,方法は公開されていない。重量で1.5倍,容量では同量の水または湯を加えるだけで飯の状態に戻るが,味は湯のほうがよい。ただし湯の量が足りない場合には芯ができ,多過ぎると水っぽい飯になるので注意が必要である。炊飯という操作が省けるので,インスタントの飯として便利であり,水分が少なく軽いので,携帯食としても適している。

α米以外に米のα化食品としてはベビーフードや即席餅がある。また,粉末玄米ミール,かゆ状玄米ミール,圧扁玄米などの即席がゆ類も一部に利用されている。他の穀類ではインスタントブームのきっかけとなった即席ラーメンがあげられる。また即席めんもあり,これらはめんの中のデンプンがα化されており,めん自身に味付けしたものとスープの素を別添したものがある。さらに欧米朝食の穀類として消費されているコーンフレークスがある。なおサンドイッチの冷凍品なども,凍結中はデンプンがβ化しないので,解凍すればすぐ食べられる一種のα化食品である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「α米」の意味・わかりやすい解説

α米
あるふぁまい

あらかじめ炊飯した米をただちに乾燥したもので、湯を注いで数分後に飯ができあがる即席食品である。第二次世界大戦中「火を使わずに飯を炊く」という要請から、化学者の二国(にくに)二郎が、オランダカッツJ. R. Katzの理論に基づき研究開発した「乾燥飯」が最初である。すなわち、普通に炊いた飯を熱乾燥し、水分含有量を8~9%以下とすると、デンプンの老化を防ぎ、長期間炊きたてに近い状態に保つことができる。この「乾燥飯」に同容量(重量で約1.4倍)の水を加えると、夏季(25~30℃)では約1時間で冷や飯ができる。もちろん熱湯であれば、数分間で温かい飯となる。その後、乾燥方法や戻しやすいようにくふうが加えられ、インスタントライスなどの形で市販されているものもある。飯がうまく炊けない条件、たとえば登山漁船などで重宝されているが、食味は、やはり普通に炊いた飯のようにはいかない。

 最近、炊飯後アルコールで急速脱水して製造したα米が、酒造米として一部用いられている。このα米は、遊離脂肪酸など酒造りのじゃまになる物質がアルコールで除かれている利点と、酒造設備の合理化(洗米や蒸米設備が不要、また廃水が少なくなる)で注目されている。

[不破英次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「α米」の意味・わかりやすい解説

α米
アルファまい

即席米ともいう。熱湯を注ぐと米飯となるもので,携帯食,非常食などに用いられる。製法は原料米を蒸して米飯としてから温度 80℃以上の状態で急速に乾燥して得る。この工程を通じ,米の中に含まれるデンプンが蒸されてβ型からα型となるが,高温状態で急速乾燥されるので,α型のまま製品化される。α型デンプンはβ型に比べて消化酵素の作用を受けやすく,うまみがあり,しかも熱湯を注ぐだけで食べられるという長所をもつ。

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世界大百科事典(旧版)内のα米の言及

【米】より

…うるち米を水洗し臼びきして得られる糝粉(しんこ),もち米を水洗し臼びきし多量の水で洗った後乾燥した白玉粉,餅またはもち米を蒸してから乾燥し石臼で粗びきした道明寺粉などがそれである。このほかうるち米の粉を原料としためんの一種であるビーフン,うるち米を蒸して乾燥したα米,同じようにもち米から作る即席餅などの製品もある。また,清酒はもとより,焼酎,みりん,米酢,みそなどの醸造加工にも米は重要な原料となっている。…

※「α米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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