(読み)きだ(英語表記)gill

翻訳|gill

精選版 日本国語大辞典 「鰓」の意味・読み・例文・類語

きだ【鰓】

〘名〙 魚のえら。あぎと。
出雲風土記(733)意宇大魚(おふを)の支太(キダ)衝き別けて」

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デジタル大辞泉 「鰓」の意味・読み・例文・類語

えら【×鰓/×腮/×顋】

水中にすむ動物呼吸器官魚類のものは、ふつうくしの歯のような鰓弁さいべん毛細血管が分布し、これに触れる水から酸素をとり、二酸化炭素を出す。
人のあごの骨の左右に角をなす部分。えらぼね。「―の張った顔」

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改訂新版 世界大百科事典 「鰓」の意味・わかりやすい解説

鰓 (えら)
gill

水中で生活する動物にみられる呼吸器官。形状は種類によりさまざまで,排出や浸透圧調節などの役割も果たしている。

甲殻類に属するエビやカニの仲間では,顎脚や歩脚のような付属肢の基部あるいは体壁から分化した何対かのえらがあり,背甲の一部によって形成される鰓室さいしつgill chamberの中に位置する。各えらを構成する鰓葉の形は種類によって異なり,クルマエビの仲間では樹枝状に分枝する鰓葉が2列に並び,ザリガニの仲間ではえらの軸の周囲に多数の糸状の鰓葉が突出し,カニの仲間では葉状の鰓葉が2列に並んでいる。呼吸に使われる水は付属肢の運動によって交換される。軟体動物ではえらは外套(がいとう)腔の上皮から分化し,鰓葉はくし状に並ぶ。アワビタニシアメフラシなどの仲間では内臓塊のねじれと関連してえらの位置と発達状態は種類によって異なり,とくにその位置は分類上,重要な特徴となる。イガイカキハマグリなどの仲間でも,えらの構造が単純なものから複雑なものまであり,その発達程度は分類上,重要な特徴となる。これらのえらの表面には繊毛が密生し,その運動によって水流を生じ,小さな餌をろ過して口へ運ぶ。したがってこの類ではえらは呼吸器官として働くばかりでなく,摂食にも関与している。イカやタコの仲間では,多くの場合,1対の発達したえらがあり,多数のひだのある板状の鰓葉が並ぶが,その表面に繊毛はない。環形動物のゴカイの仲間ではえらは体節に付属する足に糸状あるいは分枝した毛状の突起として認められることがあるが,その数や形は種類によって異なる。

多くの脊椎動物では発生の過程で咽頭部の側壁に数対のふくらみが生じ,同時にこれらに対応して外胚葉にもくぼみができる。やがて両者は相通じて体表に開く鰓裂gill slitが形成される。高等脊椎動物では鰓裂が開口するまでには至らず,別に肺の形成が進む。鰓裂の開口と並行して,それぞれの鰓裂に沿って鰓弓gill archが発達する。一生を水中で暮らす魚類では,鰓弓の外後側に無数の鰓弁gill lamellaが2列に並び,呼吸器官として働く。軟骨魚類では鰓裂は5~7対あるが,各鰓弓に2列に並ぶ鰓弁の間に介在する鰓隔膜が長く延長して体表に達するため,各鰓裂は別々に外鰓孔によって体表へ開口する。硬骨魚類では鰓裂はふつう5対あるが,鰓隔膜が退縮して体表から遊離し,体表にはえらを保護する鰓蓋gill coverが発達するので,全鰓裂は1個の共通の外鰓孔を通し体外へ開く。鰓弁は葉状で薄く,それぞれの鰓弁は両側に多数のひだ状の突起(二次鰓弁)を備える。二次鰓弁はきわめて薄く,赤血球がやっと通過できる厚さしかなく,ここを流れる血液は薄い上皮を通して水中から酸素を取ると同時に水中へ二酸化炭素を放出してガス交換を行う。呼吸に使われる新鮮な水は,口と鰓蓋の複雑な連動動作によって,絶えず口から入って二次鰓弁の表面を洗い,外鰓孔から体外へ抜ける。両生類も幼生時代にはえらで呼吸をする。すなわちイモリやサンショウウオの仲間では鰓弓の背部から樹枝状の外鰓が突出する。またカエルの仲間では幼生の初期には外鰓が発達するが,間もなく鰓弓下半部に房状に並ぶ鰓弁からなる内鰓が発達する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鰓」の意味・わかりやすい解説


えら
gill

水生動物の呼吸器官。繊毛や筋肉の運動によって送られる水に直接触れ,酸素と二酸化炭素を交換。形状は一般に櫛状,格子状,毛束状,ブラシ状。魚類では消化管が咽頭部でふくらみ,外界と通じて数対の櫛状鰓を形成 (内鰓) 。硬骨魚類には外側から鰓部をおおう鰓蓋がある。両生類の有尾類と幼生初期無尾類の鰓は,咽頭部で単に体壁が突出分枝するだけ (外鰓) 。無脊椎動物の鰓は一般に外鰓で,その形状,形成部域などにより種々分類される。甲殻類で脚鰓,関節鰓,側鰓,書鰓,水生昆虫で気管鰓,直腸鰓,尾鰓,軟体動物で本鰓,背鰓,外套鰓,ウニ類で皮鰓,ホヤ類で鰓嚢などがある。また無脊椎動物で触手と呼んでいるものは,鰓の機能をもつことが多い。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【魚類】より

…魚類は古生代の前期に最初の脊椎動物として地球に姿を現した動物群で,現在では種類数も多く,生息範囲も地球表面積の71%を占める海洋から陸水域にわたりすこぶる広い。古代エジプトの遺跡壁面には魚が頻繁に描かれ,また養魚法の古典《養魚経》は春秋時代に陶朱公(越の范蠡(はんれい))によって著されたと伝えられている。海に囲まれ水に恵まれた日本でも魚を食用としてきた歴史が古いことは,いたるところの貝塚の発掘品からも,また《風土記》《延喜式》など古文書の記録からも明らかである。…

【呼吸】より

…18世紀にはフロギストン(燃素)説の誤りを経て,ラボアジエが燃焼での酸素の役割を確定する。呼吸も体内での酸化として位置づけられたが,熱をだす燃焼と同じことが体内でも起こると考えられたので,J.L.ラグランジュは,肺のみで燃焼が起これば肺は高熱になりすぎると論じた。ここからかえって,酸素は全身末梢組織に分配されるはずだとの正しい見通しが生まれた。…

【肺】より

…空気中から体内(血液中)に酸素をとり込み,体内でつくられた炭酸ガスを空気中へ排出するガス交換(外呼吸)の機能を果たしている。肺は魚類のうきぶくろ(鰾)と同じ起源と考えられている。
【肺の起源】
 酸素の摂取に関しては,魚類のようにえら(鰓)によって水中からとり込むことに比べ,空気中からとり込むことははるかに有利である。…

※「鰓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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