(読み)ぜに

精選版 日本国語大辞典 「銭」の意味・読み・例文・類語

ぜに【銭】

〘名〙 (「せん(銭)」の変化した語)
① 金、銀、銅などの金属でつくられた貨幣。多く、円形で中央に穴がある。鵝眼(ががん)。鵝目(がもく)。鳥目(ちょうもく)
書紀(720)顕宗二年一〇月(寛文版訓)「百姓殷(さかり)に富めり。稲(いね)(ひとさか)に銀の銭(セニ)一文(ひとつ)にかふ」
※竹取(9C末‐10C初)「殿の内のきぬ、綿、せになどある限りとり出てそへてつかはす」
江戸時代、銅、鉄でつくられた貨幣のこと。金(大判小判など)、銀(丁銀・豆板など)に対する語。
浮世草子・好色五人女(1686)五「蓋ふきあかる程、今極め一歩、銭などは砂のごとくにしてむさし」
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)初「道中なさるおかたには、なくて叶はぬぜにと金」
③ 貨幣の俗称。かね。金銭。おあし。料足。要脚。
徒然草(1331頃)二一七「銭あれどももちゐざらんは、全く貧者とおなじ」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「それでも銭(ゼニ)のたち廻るがをつだよ」
④ 紋所の名。銭の形を図案化したもの。永楽銭などが用いられた。青山銭、長谷部銭、四文銭、真田六文銭などがある。
⑤ 特に、真田家の家紋(真田六文銭)をいう。
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「銭がなくなって大坂しまい也」

せん【銭】

〘名〙
① ぜに。かね。貨幣、特に、金属貨幣
※東大寺諷誦文(796‐830頃)「一銭无き人は〈略〉掌を合せよ」 〔漢書‐楊惲伝〕
② 昔の通貨の単位。一貫の一〇〇〇分の一。文(もん)
※森文書‐永祿一一年(1568)一〇月二日・北条氏康印判状「大鋸弐手、卅日分、御倩被成事 六貫文、作料、一日一人、五十銭つつ、弐貫四十文」
③ 通貨単位。一円の一〇〇分の一、一厘の一〇倍。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
秤目で、貫の一〇〇〇分の一。匁(もんめ)
延喜式(927)三七「度嶂散一剤、〈度嶂散〈略〉平旦以温酒、服一銭匕〉」

ぜね【銭】

〘名〙 「ぜに(銭)」の変化した語。
町人嚢(1692)四「一文不通なる故に物いひなどもかたことのみにておかしく、つねに銭(ぜに)をもぜねとのみいひけるを」
浄瑠璃・加増曾我(1706頃)一「此比もかの君がぜねを十六まいつんだいて」

ちゃん【銭】

〘名〙 (「銭」の唐宋音「ちぇん」の変化した語という) ぜに。金銭。ちゃんころ。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「ちゃんが一文なくて」

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デジタル大辞泉 「銭」の意味・読み・例文・類語

せん【銭〔錢〕】[漢字項目]

[音]セン(漢) [訓]ぜに
学習漢字]6年
〈セン〉
ぜに。かね。「銭湯悪銭金銭古銭口銭賽銭さいせん借銭鋳銭銅銭米銭連銭れんぜん
貨幣の単位。円の一〇〇分の一。「一銭
〈ぜに〉「銭形小銭日銭身銭

ぜに【銭】

《「せん(銭)」の音変化》
金・銀・銅など、金属でつくられた貨幣。多く円形で、中央に穴がある。
貨幣。金銭。かね。「をためる」
江戸時代、銅・鉄でつくられた貨幣。金・銀でつくられたものに対していう。
紋所の名。銭の形をかたどったもの。
[類語]金銭貨幣通貨おあし外貨硬貨金貨銀貨マネーコイン

ちゃん【銭】

唐音》ぜに。金銭。ちゃんころ。
「―一文無き此の身の仕合せ」〈浮・新色五巻書・一〉

せん【銭】

貨幣の単位。円の100分の1。
昔の貨幣の単位。貫の1000分の1。もん

ぜ‐ぜ【銭】

ぜに(銭)をいう幼児語。おぜぜ。

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改訂新版 世界大百科事典 「銭」の意味・わかりやすい解説

銭 (ぜに)

日本では貨幣の総称として銭という用語が使われるが,金銀貨との比較のうえで銭貨といえば,主として銅銭を意味する。日本最初の官銭としての銭貨は708年(和銅1)鋳造の和同開珎(わどうかいちん)で,以後,万年通宝,神功開宝,隆平永宝,富寿神宝,承和昌宝,長年大宝,饒益神宝,貞観永宝,寛平大宝,延喜通宝,乾元大宝のいわゆる皇朝十二銭が鋳造・発行された。中世に入ると各種の中国渡来銭が日本に流入して渡唐銭と呼ばれ,鎌倉時代には宋・元の銭貨が,室町時代には明銭が主として用いられた。明銭の洪武通宝永楽通宝,宣徳通宝などは中国銭のなかでも最も代表的なものである。中国渡来銭の流通が軌道に乗るようになると,室町時代には中国銭を形態のうえから阿堵(あと),鳥目(ちようもく),鵝眼(ががん)などと呼び,また使用の面から御脚,用途,料足などととなえるようになった。中国銭の国内通用が盛んになると,中国官鋳制銭をモデルにして造られた私鋳銭や模造銭が現れ,官銭は一般に良銭,精銭と呼ばれ,私鋳銭,模造銭は悪銭または鐚銭(びたせん)ととなえられた。精銭と悪銭とが並んで用いられたので室町時代には撰銭(えりぜに)の現象が生じ,悪銭はその使用に際して割り引かれたり,排除される傾向が生じた。

 江戸時代に入ると,幕府は1606年(慶長11)に銅銭の慶長通宝を鋳造し,17年(元和3)に元和通宝を発行したが,中世以来の中国銭を廃棄することはできなかった。36年(寛永13)に寛永通宝が創鋳され,これが寛永~寛文期には大量鋳造されて,ようやく新銅銭の大量供給により永楽通宝などの廃棄に成功し,銅銭によって貨幣流通の全国的統一をはじめて実現することができた。その後宝永通宝天保通宝文久永宝などの各種の銅銭や真鍮銭,鉄銭が造られた。これらの銅銭,真鍮銭,鉄銭には1文銭,4文銭,10文銭,100文銭など多くの種類が見られた。明治維新以後も江戸時代の貨幣は用いられたが,1871年(明治4)に大阪に造幣局が開設され,金銀貨とならんで銅貨も造られた。73年には2銭,1銭,半銭(5厘),1厘の各銅貨が発行された。それ以後も寛永通宝,天保通宝,文久永宝などが用いられた。
貨幣
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「銭」の意味・わかりやすい解説


ぜに

貨幣の一種。鵞眼 (ががん) ,青鳧 (せいふ) ,鳥目 (ちょうもく) ,青銅ともいわれ,円形で中央に穴のある金属貨幣。銅を主材料とし,これに金,銀,鉄,鉛,真鍮などを入れて鋳造されたこともあった。1銭を1文と呼び,1000文を1貫と呼んだ。日本では,7世紀後半に銅銭の史料的記述を認めることができるが,国に鋳銭司をおいて鋳造した最初のものは,和銅1 (708) 年の和同開珎である。以来,奈良時代を通じてその鋳造が行われ,平安時代前期の天徳2 (958) 年乾元大宝の鋳造に及んだ。これら律令制下の鋳造銭は 12種類に達し,いわゆる皇朝十二銭と呼ばれており,これは流通せず,鋳造が中断された。鎌倉,室町時代には,中国から宋銭,元銭,明銭が輸入され流通した。戦国時代には,それら多種類の銭の流通により,撰銭 (えりぜに) が行われ,混乱が著しかったが,安土桃山時代,織田信長,豊臣秀吉により銭貨の統一が促進され,江戸時代に入って寛永 13 (1636) 年寛永通宝の鋳造以来,各種の銭貨が鋳造され,商業の発展とともにその多量な流通がみられた。銭貨の鋳造は,江戸,大坂のみならず,水戸,仙台その他の地方においても行われた。 (→日本の貨幣制度 )

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「銭」の解説


ぜに

鵞眼(ががん)・鳥目(ちょうもく)・青蚨(せいふ)(青鳧)・青銅とも。貨幣の総称。一般に円形で中央に方孔をもつ金属貨幣。おもに銅製だが,金・銀・鉛・鉄・真鍮などの銭もある。銅銭の基本単位は文(もん)で,1000文を1貫文とし,また疋(10文),連・緡(さし)(100文),結(ゆい)(1貫文)などの単位も用いた。古代に皇朝十二銭が鋳造・発行されたが,十分流通しなかった。中世に入ると,宋・元の渡来銭が流入し,その流通が始まり,室町時代には大量の明銭が輸入され,本格的な貨幣経済が始まった。渡来銭にもとづく貨幣経済の進展のなかで,私鋳銭や模造銭が現れ,流通貨幣を選別する撰銭(えりぜに)が行われた。近世に入ると,江戸幕府は幣制の統一を進め,銭座(ぜにざ)を設置して寛永通宝を大量に発行し,銭貨の統一を完成した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「銭」の解説


ぜに

江戸時代,三貨の一つ。

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