郷ノ浦(読み)ごうのうら

日本歴史地名大系 「郷ノ浦」の解説

郷ノ浦
ごうのうら

[現在地名]郷ノ浦町郷ノ浦

武生水むしようず村のうちで、壱岐八浦の一つ。永田ながた川の河口部にあたり、東にたけつじがそびえる。古くはこうノ浦と称したとされ(壱岐名勝図誌)、「こうの浦」と称したというので、国府の浦であったとも想定できる。平戸藩浦掛の支配を受け、史料上も在方の本村武生水村とは別に扱われる場合が多い。枝浦に本居もとい浦がある。永禄(一五五八―七〇)末に郷ノ浦の潟を築き上げ、城下とするために本居もといの住民を移したと伝える(壱岐国続風土記)。天正一五年(一五八七)の筑後国肥前国肥後国郡之帳大方小名(橋村肥前大夫文書)にみえる「武生津嶋 ミな戸」は当浦と考えられる。同二〇年四月、朝鮮半島へ出兵するため初瀬はぜまで渡海した鍋島氏の一行は「かううら」まで船を回している(高麗日記)正保国絵図に「江浦」とみえ、平戸や肥前名護屋なごや(現佐賀県鎮西町)などと結ばれる。承応元年(一六五二)深江の下る浜の住民七〇余戸を移したともいう(壱岐郷土史)。享保五年(一七二〇)の郡鑑(山口文庫文書)では家数一七〇(浦四六、町人・漕切一二四)、人数六七七(浦一七四、町人・漕切五〇三)、船二八、網三、酒屋五。「壱岐国続風土記」によれば、寛政一〇年(一七九八)当時は戸数一七七・人数九三三、牛三二・馬一、小船一一・伝通船一三、酒屋五・麹屋七。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「郷ノ浦」の意味・わかりやすい解説

郷ノ浦
ごうのうら

長崎県壱岐(いき)郡にあった旧町名(郷ノ浦町(ちょう))。現在は壱岐市郷ノ浦町地区。旧郷ノ浦町は1955年(昭和30)武生水(むしょうず)町と沼津、渡良(わたら)、柳田(やなぎだ)、志原(しはら)、初山の5村が合併して成立した。2004年(平成16)勝本(かつもと)町、芦辺(あしべ)町、石田町と合併、市制施行して壱岐市となる。旧郷ノ浦町は、壱岐島南西部に位置する。武生水は、古くから壱岐の主邑(しゅゆう)で、文明(ぶんめい)年間(1469~1487)壱岐を統一した波多(はた)氏が亀丘城(かめおかじょう)(亀尾(かめのお)城)を築き、江戸時代には平戸藩(ひらどはん)が城代を置いた所である。郷ノ浦港や、壱岐市役所、高校、ターミナルビル、地方合同庁舎などがあって、壱岐の表玄関であり、島の政治、経済、文化の中心をなす。郷ノ浦港は近代的に整備され、博多(はかた)からフェリーボート、高速船が通じる。国道382号が壱岐市内の勝本や石田へ走る。地区内の台地面は畑地が広く、ボーリングによる畑地灌漑(かんがい)が行われ、葉タバコ、サツマイモダイズミカンなどを産する。肉用牛の生産も盛んである。港に近く柑橘(かんきつ)選果場がある。渡良、初瀬(はぜ)などの一本釣り漁業を主とする純漁村では、イカの水揚げが多く、スルメを生産し、半城(はんせい)湾では真珠養殖が行われている。郷ノ浦の背後にある岳ノ辻(たけのつじ)(213メートル)は壱岐の最高峰で、臼状(きゅうじょう)火山のみごとな形状を示す。牧崎には「鬼ノ足跡(おにのあしあと)」の海食洞があり、ともに観光地をなす。

[石井泰義]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「郷ノ浦」の意味・わかりやすい解説

郷ノ浦
ごうノうら

長崎県壱岐島の南西部を占める地域。旧町名。 1955年武生水 (むしょうず) 町と渡良,柳田,沼津,志原,初山の5村が合体して郷ノ浦町となり,2004年3月芦辺,石田,勝本の3町と合併して壱岐市となった。中心集落の武生水は,文明4 (1472) 年に壱岐を統一した波多氏が亀丘城を築いたところで,江戸時代には平戸藩の代官所があった。現在も島の中心地で,県などの出先機関が集中する。主産業は農業で,米,タバコなどの栽培と畜産が行なわれる。ニンニク壱岐焼酎は特産品。漁業は沿岸の一本釣り,延縄漁業が主。海岸の大部分と南部の岳ノ辻 (213m) は壱岐対馬国定公園に属する景勝地。岳ノ辻展望台からの眺望は絶景。重要無形民俗文化財の壱岐神楽を伝える。国道 382号線が通り,郷ノ浦港は博多,厳原 (対馬) と定期航路で結ばれ,島外の釣り客を多く集める。

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改訂新版 世界大百科事典 「郷ノ浦」の意味・わかりやすい解説

郷ノ浦 (ごうのうら)

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世界大百科事典(旧版)内の郷ノ浦の言及

【壱岐】より

…西海道の一国〈壱岐島〉として国府や国分寺がおかれ,江戸時代には平戸松浦藩の領地であった。廃藩置県により平戸県を経て長崎県壱岐郡となり,壱岐支庁のある郷ノ浦町を中心に,芦辺,勝本,石田の4町からなる。本土との交通は,福岡市博多港と郷ノ浦(または芦辺)間,佐賀県呼子(よぶこ)と印通寺(いんどうじ)(石田町)間の二つの定期航路がある。…

※「郷ノ浦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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