造作(読み)ぞうさ

精選版 日本国語大辞典 「造作」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐さ ザウ‥【造作・雑ザフ作】

〘名〙
① (━する) 仏語。意識してつくりだすこと。
※正法眼蔵(1231‐53)仏教「その成就といふは、造作にあらす、無作にあらす」
※十善法語(1775)四「呪術を造作して世間を利益すとある」
技巧
※遊楽習道風見(1423‐28頃)「此『小馬とめて』の歌の如く、まさしくさうさの一もなく風躰心をも求めず」
③ 手のかかること。手数のかかること。手間のかかること。骨折り。面倒。厄介
※実隆公記‐大永七年(1527)四月一四~一七日紙背(三条実香書状)「昨日内々渡御儀申候つる。還而御雑佐之様候間、重而不申候」
石山本願寺日記‐顕如上人文案・天正六年(1578)九月一〇日「仍信長此表へ罷向由候、番衆之儀いつもざうさながら何時によらず案内次第にのぼるべく候」
※浮世草子・好色万金丹(1694)三「此文を人雇ひして遣るも造作(ザウサ)のかかる事と思案して」
費用のかかること。ことをするためにかかる金。
※上杉家文書‐(年月日未詳)(江戸)鉄砲一巻之事「毎年入不申候鉄炮を張申事、いらざる儀に候へども、算用仕、見申され候へは、年に百挺宛すたり申候ても、五六百石の御ざうさに御座候」
浄瑠璃薩摩歌(1711頃)中「こっちもぞうさがすくないと、さす手引手にさん用也」
⑤ ごちそう。もてなし。ごぞうさ。
※咄本・戯言養気集(1615‐24頃)上「いざこれをよび、我こをしゅくせんとて、ことごとしきざうさなど物し、むかひをやり」
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)五「これはありがたい。まんぢうの代もよろしうおたのみ申ます。ハハハハハ、おもいがけないおざうさにあづかりました」
⑥ 近世、加賀国(石川県)で、下級の遊女のこと。
評判記色道大鏡(1678)一四「伊勢の遊び女を彦右(ひこゑ)といひ、尾州にては壁むしり、加賀にては造作(ザウサ)越前にて干瓢(かんぴょう)

ぞう‐さく ザウ‥【造作・雑ザフ作】

〘名〙
① つくること。こしらえること。製作。また、つくられたもの。
※律(718)逸文・壇興「若有造作、及有毀壊、備慮不謹、而誤殺人者。徒一年半」
※名語記(1275)五「糸にしもかぎらず、造作にもくみ物はあるべし」
※童子問(1707)下「二氏之数、皆出其意想造作
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下「此理に心を注がずして、其人物を造作(ゾウサク)せば」 〔易経疏‐繋辞下〕
② 建物をつくること。建築すること。また、その建てられた建物。家作。
※後二条師通記‐寛治六年(1092)六月二三日「造作之間、臨時工等給祿、大工則季馬給之」
愚管抄(1220)六「六波羅平相国が跡に二町をこめて造作しまうけて京へ入りける」
徒然草(1331頃)五五「造作は、用なき所をつくりたる、見るも面白く、万の用にも立ちてよしとぞ」
③ 建物内部の建具・取付物の総称。床の間・戸棚・階段・流し・畳などの類。
※俳諧・誹讔三十棒(1771)「造作(ザウサク)は戸棚ひとつ」
※酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月一七日「内部(うち)の雑作(ザウサク)も半ば出来上った新築校舎」
④ 顔のつくり。顔の目鼻立器量
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「非道(ひど)く癯(やつ)れてゐる故(せゐ)か顔の造作(ザウサク)がとげとげしてゐて」

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デジタル大辞泉 「造作」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐さく〔ザウ‐〕【造作】

[名](スル)
つくること。こしらえること。
「其人物を―せば」〈逍遥小説神髄
家を建てること。また、その家。「離れを造作する」
建築内部の仕上げ材・取り付け材の総称。鴨居かもい敷居長押なげし・天井・床・建具など。「造作に凝る」
顔の目や鼻のつくり。目鼻立ち。「造作の大きい派手な顔」
[類語](2建築建設建造築造営造造営建立こんりゅう普請ふしん作事さくじ新築改築増築移築建てる

ぞう‐さ〔ザウ‐|ザフ‐〕【造作/雑作】

手間や費用のかかること。めんどう。「―もなく事を運ぶ」「―を掛ける」
もてなし。ごちそう。
「飛んだ御―を頂きます」〈鏡花高野聖
[類語](1手数てすう手数てかず手間世話/(2もてなす供応馳走ふるまう饗する相伴遇する接待歓待構いお構い愛想接客もてなし椀飯おうばん振る舞い

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改訂新版 世界大百科事典 「造作」の意味・わかりやすい解説

造作 (ぞうさく)

建築工事のうち,柱,はりなどの構造部材以外のもので大工職が担当する部分をいう。雑作の転訛した語といわれる。木造建築では,天井,床,階段,建具枠,床の間,押入れなどからなる。

 伝統的な和風住宅の造作には,竿縁(さおぶち)天井,格(ごう)天井,板床,畳寄せ,敷居,鴨居(かもい),無目(むめ),なげし,床の間のかまち,落し掛け,違棚,書院などが用いられ,それらの部材の構成方法には一定の形式が存在している。和風住宅では柱の心と心との間の寸法,または内法(うちのり)寸法が地域ごとに規格化されており,造作に用いられる木材の長さも数種類に限られている。またそれらの断面形状には,柱の太さを基準にして一定の比率で決められた寸法が用いられている。この寸法比率の規範のことを木割という。木割が存在することによって,和風造作はあるレベル以上の意匠が容易に得られていた。また造作に用いられる木材も,銘木などとして市場に流通することが可能になっている。和風造作の材料は木材が主であり,その組合せには伸縮を吸収し,そりを矯正するようなくふうがなされる。これらには大工の高度な加工技術が生かされている。

 洋風建築でも初期のものは,床,壁の羽目板,幅木(はばき),窓枠,出入口枠,階段,作りつけ家具など多くの部分が木材を用いた造作工事となっていた。しかし,床,天井,壁といった主要な部位の工事については造作から独立させて扱うことも多かった。

 現在の建築工事では,従来は造作工事であった部分でも大工職以外の職種によって工事が行われることが多くなっている。建築材料が木材から無機系の材料に移行し,それとともに構法が変化したことが一因である。また,造作は大工の高度な技能が発揮される対象であったが,労務費の高騰,熟練技能者の減少などにより,相対的に建設費のかかる部分となってきている。その結果,造作工事であった部分が,工場生産された部品・建材などで構成されるように変わりつつある。また,出入口枠などは,あらかじめ所定の断面形状に加工されたものが使われるなど,造作工事の合理化が進められている。作りつけ家具なども主要な造作工事であったが,現在では既製品のユニット家具が用いられることが多い。なお,造作ということばは,建物を作ること,あるいはその建物自体を指すこともある。
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普及版 字通 「造作」の読み・字形・画数・意味

【造作】ぞう(ざう)さく

ものを作る。漢・楊脩〔臨侯(曹植)に答ふる牋〕嘗(かつ)て、執事の牘(とく)を握り筆を持ち、作するるを親(みづか)ら見しに、誦をして心に在り。書を手に借るが(ごと)く、曾(かつ)て斯須(しばら)くも少しく思慮を留めず。

字通「造」の項目を見る

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リフォーム用語集 「造作」の解説

造作

木工事のうち、天井・床板・敷居・鴨居(かもい)・長押(なげし)・階段・棚・床の間などの仕上工事の総称

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