精選版 日本国語大辞典 「評判記」の意味・読み・例文・類語
ひょうばん‐き ヒャウバン‥【評判記】
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江戸時代、いろいろな事物を評判した書物。古くは1624年(寛永1)刊の『つゆ殿物語』『四十二のみめあらそひ』などの遊女や遊里の紹介、批評を載せた遊女評判記に始まる。これに倣って『役者の噂(うわさ)』(1656)、『野郎虫(やろうむし)』(1659)、『剥野老(むきところ)』(1662)といった役者評判記が刊行され、初めは容姿本位の評判であったのが、八文字屋(はちもんじや)の参画により『役者口三味線(くちじゃみせん)』(1699)からは技芸本位の評判が定着するようになった。以来明治に至るまで200年の長きにわたり毎年、基本型は半紙半截(はんせつ)の横本3冊に、京、江戸、大坂三都の評判を収め、正月と3月の年2回定期的に刊行され続けた。いわば、史上最長の定期刊行物といえ、当時の人々にとってなじみの深い実用書であった。それだけに、バリエーションを生み出しやすく、江戸後期には実用の域を離れ、戯作(げさく)の一趣向として採用されて、談義本評判記『千石篩(せんごくどおし)』(1754)を皮切りに黄表紙評判記『菊寿草』(1781)、『岡目八目(おかめはちもく)』(1782)、『江戸土産(みやげ)』(1784)、洒落本(しゃれぼん)評判記『戯作評判花折紙(けさくひょうばんはなのおりがみ)』(1802)といった戯作(げさく)評判記をはじめとして『三都学士評林』などの学者評判記、狂歌師評判『評判筆果報』(1785)、読本(よみほん)の評判記『犬夷(けんい)評判記』(1818)など人物、諸文芸、名物評判記が続々と刊行されることとなった。
[中野三敏]
『中野三敏編『江戸名物評判記集成』(1987・岩波書店)』
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…江戸時代初めより続く大仏餅屋の主人。1696年ころに浄瑠璃の作があるが,99年役者評判記《役者口三味線》を,1701年には浮世草子《けいせい色三味線》を京都の八文字屋から出してより,評判記・浮世草子の作者として活躍。前者は以前の容色本位の評判を脱して芸評書としての性格をはっきりうち出し,体裁・位付け・批評法など以後幕末・明治に至る評判記の型を定める書となった。…
※「評判記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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