見立て(読み)ミタテ

デジタル大辞泉 「見立て」の意味・読み・例文・類語

み‐たて【見立て】

見て選び定めること。選定。「妻の見立てによるネクタイ
病気診断すること。また、その結果。「医者見立て」「見立て違い」
2から転じて》こうだろうと予測すること。「日経平均8000円割れはないというのが専門家見立てだ」

㋐あるものを、それと似た別のもので示すこと。「庭園富士見立ての山を築く」
俳諧で、あるものを他になぞらえて句をつくること。
思いつき。また、趣向
「何をしたればとて商ひの相手はあり。珍しき―もがな」〈浮・永代蔵・三〉
見送り。送別
「明日―に来ませう」〈浄・氷の朔日
[類語]診察診断検診受診判断

み‐だて【見立て】

《「みたて」とも》見た感じがよいこと。みばえ。
「よろづに―なく」〈帚木

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「見立て」の意味・わかりやすい解説

見立て (みたて)

江戸時代の芸術創作上の趣向の一つ。江戸文芸の全般に共通の趣向であるが,ここでは歌舞伎に直接関係のある面に限って記す。(1)歌舞伎の演出のうち,周知のある形を背後に想像させるような特別の形を作る場合にいう。たとえば《曾我の対面》の幕切れは,工藤祐経を鶴の形,五郎・十郎と朝比奈とを富士山の形に見立てた見得になる約束で,初春狂言にふさわしいめでたさを象徴する。《忠臣蔵》七段目で,酒宴余興に仲居たちが〈見立て〉の遊びをするところがある。たとえば,九太夫の髷(まげ)を箸ではさんで,梅干に見立てる類で,この場の見立ては役者の機知に任されていた。鳴物は三下りの特殊なにぎやかな〈見立ての合方〉を使う。立回りの型にも見立ての手法を用いる場合がある。(2)浮世絵で〈見立て〉という用語には,意味の異なった二つの用法がある。一つは,たとえば恵比寿・大黒や歴史上の人物など,周知の姿の特徴をそっくり採りながら,当代風の美女や若衆に変えて描く手法。歌舞伎の有名な場面を見立てた作も多い(《忠臣蔵》七段目,《菅原》車引など)。いま一つは,その役者が実際には上演していない役を,上演したものに見立てて,その似顔を用いて描く手法をいう。花形役者の人気を利用したもので,紙上空想舞台を楽しむ趣がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の見立ての言及

【肖像】より

…個人を写した単身肖像画(彫刻)のほかに,絵画では夫婦や友人を組み合わせて表した二人肖像画,団体を表した集団肖像画もある。肖像は祭壇画や物語画(歴史画)の中に描き込まれる場合もあり,独立像についても,神話的存在などに擬した〈見立て〉像がつくられることがある。厳密な意味での肖像は,外貌の忠実な記録であることを前提とするが,この肖似性の要求は,時代や社会の現実に対する態度のいかんによって変化するものであり,無視されることすらないわけではない。…

※「見立て」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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