褒章(読み)ほうしょう

精選版 日本国語大辞典 「褒章」の意味・読み・例文・類語

ほう‐しょう ‥シャウ【褒章】

〘名〙
高僧天皇が与えるほめことば。
※黄梅院所蔵文書‐宝徳二年(1450)八月二七日・後花園天皇宸筆謚号勅書「染宸翰、而加褒章、特謚曰仏統国師
学問文化産業などの面で、立派な行ないや業績のあった人に授与される栄典。また、その制度。明治一四年(一八八一)に始まる。現在、紅綬・緑綬・藍綬・紺綬・黄綬・紫綬の六種がある。〔褒章条例(明治一四年)(1881)〕

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デジタル大辞泉 「褒章」の意味・読み・例文・類語

ほう‐しょう〔‐シヤウ〕【褒章】

栄典の一。ある分野において、りっぱな行い、功績のあった人を表彰するために国から与えられる記章紅綬こうじゅ(人命救助)・緑綬(徳行卓越)・藍綬らんじゅ(公益・教育など)・紺綬(公益のための私財寄付)・黄綬(業務精励)・紫綬(文化功労)の6種が定められている。→叙勲じょくん勲章
[補説]褒章の種類と授与対象
種類授与対象
紅綬褒章自己の危難を顧みず人命の救助に尽力した者
緑綬褒章自ら進んで社会に奉仕する活動に従事し徳行顕著である者
黄綬褒章業務に精励し衆民の模範である者
紫綬褒章学術・芸術上の発明・改良・創作に関して事績の著しい者
藍綬褒章公衆の利益を興し成績著明である者、または公同の事務に尽力した者
紺綬褒章公益のため私財を寄附した者
飾版しょくはん既に褒章を授与された者に、さらに同種の褒章を授与する場合

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「褒章」の意味・わかりやすい解説

褒章
ほうしょう

国の栄典の一つ。主として民間人の善行を表彰する趣旨で、国から与えられる名誉の標章。1881年(明治14)褒章条例(太政官布告63号)が公布され、紅綬(こうじゅ)褒章、緑綬褒章、藍綬(らんじゅ)褒章の3種が定められたが、その後1918年(大正7)紺綬褒章、さらに1955年(昭和30)黄綬褒章、紫綬褒章が増設されて、現在6種となっている。これらの褒章は銀製の章(メダル)をつるす綬(リボン)の色によって識別され、表彰の対象となる善行、事績の内容によって、それぞれ授与される褒章が定められている。褒章は、勲章とは異なって等級がなく単一級である。また、褒章の裏面には受章者の氏名が刻印される(紺綬褒章を除く)。すでに褒章を受章した者が再度同じ種類の褒章を授与されるような善行または事績があった場合には、そのつど飾版(褒章の綬につけて飾るもの)1個が授与される。表彰される者が団体の場合には褒状が授与される。授与される者が死亡した場合には、その遺族に、追賞として賞杯(銀杯)または褒状が授与される。なお、1947年(昭和22)新憲法施行の際、他の栄典が廃止または運用の停止措置がとられたのに対し、この褒章制度のみは中断されることなく、むしろ運用が強化され、栄典制度の空白を補う効用があった。

内閣府賞勲局]

沿革と授与対象

紅綬褒章

自己の危険を顧みないで人命を救助した者に授与される。綬は紅色。

[内閣府賞勲局]

緑綬褒章

孝子、節婦など徳行の優れている者に授与される。綬は緑色。第二次世界大戦後の受章者は3人にすぎず、近年授与例はない。

[内閣府賞勲局]

黄綬褒章

篤農家、一般勤労者を対象とし、業務に精励し衆民の模範たるべき者に授与される。綬は黄色。

[内閣府賞勲局]

紫綬褒章

学術・芸術上の発明、改良、創作について事績著明な者に授与される。綬は紫色。

[内閣府賞勲局]

藍綬褒章

教育・衛生・慈善・防疫の事業、学校・病院の建設、道路・河渠(かきょ)・堤防・橋梁(きょうりょう)の修築、田野の墾闢(こんびゃく)、森林の栽培、水産の繁殖、農商工業の発達について公衆の利益を興した者または公同の事務に勤勉した者に授与される。綬は藍(あい)色。

[内閣府賞勲局]

紺綬褒章

公益のため私財を寄付した者に授与される。綬は紺色。当初は、国および地方公共団体ならびに特定の公益法人に対し私財1万円以上を寄付した者が対象となっていたが、数次の改定を経て、1981年(昭和56)から500万円以上に改められている。なお、二度以上私財を寄付した者には銀飾版が授与されるが、これが5個以上になると、5個ごとにこれらと引替えに金飾版が授与される。また、1500万円以上の私財を寄付した者には、紺綬褒章のほか、木杯一組が授与される。団体が1000万円以上寄付した場合は、褒状が授与される。

[内閣府賞勲局]

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勲章・褒章がわかる事典 「褒章」の解説

ほうしょう【褒章】

勲章位階と並ぶ日本の栄典の一つ。勲章が国家または公共への功労を顕彰(けんしょう)するものであるのに対し、褒章は社会の各分野での優れた事績、行いを顕彰する。1881年(明治14)の太政官布告第63号「褒章条例」によって制定され、自己の危難を顧みず人命救助した人に紅綬(こうじゅ)褒章、孝子(孝行な子)・節婦(節操堅固な婦人)など徳行卓絶な人、または業務に精励し衆民の模範である人に緑綬(りょくじゅ)褒章、教育、衛生事業、学校・病院の建設、道路・橋梁などの修築、田野の開墾、森林の栽培、水産の繁殖などに貢献した者に藍綬(らんじゅ)褒章を授与することになった。次いで1918年(大正7)に、公益のために私財を寄付した者に授与する紺綬(こんじゅ)褒章が追加され、さらに、第二次世界大戦後の1955年(昭和30)に条例の一部が改正され、業務に精励し衆民の模範である人を緑綬褒章から切り離して黄綬(おうじゅ)褒章の対象に、また従来は藍綬褒章に含まれていた学術・芸術・発明などの顕著な功績に対し新たに紫綬(しじゅ)褒章を制定することになり、計6種類となった。これには勲章のような等級はない。2002年(平成14)8月の閣議決定「栄典制度の改革について」では、対象者を拡大する観点から、緑綬褒章にボランティア活動を加える、紫綬褒章の年齢制限を撤廃するなどの改善がはかられた。紺綬褒章以外の褒章の授与は、勲章の春秋叙勲に合わせ、4月29日と11月3日に春秋褒章として発令され、受章者数は毎回おおむね800名を予定している。章は円形のメダルで、中央の金色の円内に褒章と記され、それを銀色の桜花紋(おうかもん)が囲んでいる。6種類は、それぞれの名称となっている色でつくられた、章を吊るす綬(じゅ)(リボン)で区別されている。複数回の受章となる場合は、褒章でなく、銀製の飾版(しょくはん)が授与され、それが5個以上になると、5個ごとに金製の飾版1個と引き換える。なお、表彰される者が団体の場合は、褒章ではなく褒状が授与される。また、受章対象者が死亡している場合は、遺族に賞杯(銀杯・木杯)または褒状が贈られる(遺族追賞)。

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百科事典マイペディア 「褒章」の意味・わかりやすい解説

褒章【ほうしょう】

広く民間の各種善行者に授与される栄典。種類による区別はあるが等級の差はない。太政官布告の褒章条例(1881年)で定められ,初めは紅綬褒章緑綬褒章藍綬褒章の3種,1918年紺綬褒章が加わり,1955年政令により黄綬褒章紫綬褒章の各褒章ができ,6種となった。天皇が内閣の助言と承認により授与する。→位階勲等勲章栄典制度

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改訂新版 世界大百科事典 「褒章」の意味・わかりやすい解説

褒章 (ほうしょう)

栄典制度の一つで,勲章が国家に功績ある者に与えられるのに対し,社会や公共のため尽くした人々に与えられる栄典。1881年12月7日太政官布告第63号の褒章条例によって規定された。自分の危険を顧みず人命救助をした者には紅綬褒章,孝子・節婦・徳行卓絶なる者や実業に精励して一般人の模範たるべき者には緑綬褒章,教育,病院建設,道路・橋梁などの修築,田野の開墾,実業の発達などに貢献した者に藍綬褒章を与えることとした。綬は3種の色で区別し,メダルの表面に褒章とあり,裏面には〈賜氏名〉が入れられている。1918年9月公共機関に私財を寄付した者への紺綬褒章が追加され,第2次大戦後の1955年1月に条例の一部が改正されて,業務に精励する者への黄綬褒章と,学術,芸術,発明などの顕著な功績に与えられる紫綬褒章の2種が加えられ,6種となった。これらは生存者に与えられるが,受章者が死亡した場合は遺族に賞杯または賞状が授与される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「褒章」の意味・わかりやすい解説

褒章
ほうしょう

栄典制度」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の褒章の言及

【造幣局】より

…通常の貨幣のほか,オリンピック,万国博覧会など国家的行事に関する記念貨幣の製造も造幣局の業務である。造幣局の業務としては,そのほかに,(1)総理府賞勲局の注文による勲章,褒章類の製造,(2)官公庁その他の注文による銀盃,バッジ,メダル等金属工芸品の製造,(3)鉱山会社,貴金属商等の依頼による貴金属地金の精製および品位証明,(4)官公庁その他の依頼による地金,鉱物の分析および試験,(5)貴金属製品の製造業者または販売業者からの依頼による貴金属製品の品位証明,などがある。なお,毎年,大蔵大臣が執行官となって,〈製造貨幣大試験〉が行われるのが例となっているが,これは,製造された貨幣が定められた誤差の範囲内にあるかどうかを検査するものである。…

※「褒章」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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