装束(読み)しょうぞく

精選版 日本国語大辞典 「装束」の意味・読み・例文・類語

しょう‐ぞく シャウ‥【装束】

〘名〙
① 衣服。着物衣裳。そうぞく。
西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)一二月二五日「羅陵王装束一具」
② (━する) 衣服や装身具、調度の類を完備して配置すること。衣冠、束帯、直衣(のうし)などで装うこと。身じたくすること。また、その装い。いでたち。そうぞく。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「四人は孔雀のしゃうぞくす」 〔北史‐李弼伝〕
③ (━する) 家屋、庭、また道具などを装飾すること。また、その装飾品。しつらえ。そうぞく。
皇太神宮儀式帳(804)「太神正殿装束六物。壁代生絁御帳二条」
※今昔(1120頃か)三一「沈(ぢん)の念珠の虎珀の装束したるを押攤(おしもみ)て」
④ 合羽の留め具。

そう‐ぞ・く サウ‥【装束】

(名詞「そうぞく(装束)」の動詞化)
[1] 〘自カ四〙 装束を着ける。装う。しょうぞく。そうずく。
※蜻蛉(974頃)中「をさなき人、まゐらまほしげにおもひたれば、さうぞかせていだしたつ」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「桜の御直衣に、えならぬ御そひき重ねて、たきしめさうぞき給ひて」
[2] 〘他カ四〙 使えるような状態に用意する。しつらえる。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「さうぞきをかれたる琴どもをとうでさせて、あてあてに奉り給へれば」
[補注](1)漢語を活用させて動詞として用いるものには、他に「騒動(そうど)く」「彩色(さいし)く」などがあるが、平安時代ではごく少ない。
(2)類義の「装束(しゃうぞく・そうぞく)す」は飾り立てる動作そのものをさすのに対し、「装束く」は飾りつけた衣装を身につけ、着飾っている状態をさす。

そう‐ぞく サウ‥【装束】

〘名〙
① 衣服。着物。衣装。しょうぞく。
※竹取(9C末‐10C初)「たてる人どもは、さうぞくの清らなること物にも似ず」
② (━する) 衣服や装身具、調度の類を完備して配置すること。衣冠、束帯、直衣などで装うこと。身じたくすること。また、その装い。いでたち。しょうぞく。そうずく。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「人のめでたきさうぞくし、沈(ぢん)、麝香(ざかう)にしめて」
③ (━する) 家屋や庭、また道具などを装飾すること。また、その装飾品。しつらえ。しょうぞく。
※枕(10C終)三三「よくさうぞくしたる数珠(ずず)かいまさぐり、手まさぐりにして」

しょう‐ぞ・く シャウ‥【装束】

〘自カ四〙 (名詞「しょうぞく(装束)」の動詞化) 装束を着ける。装う。そうぞく。
※蜻蛉(974頃)中「さまざまにしゃうぞき集りて、二車(ふたくるま)ぞある」
※源氏(1001‐14頃)浮舟「いと細やかに、なよなよとしゃうそきて」

そう‐ず・く サウ‥【装束】

〘自カ四〙 (名詞「そうずく(装束)」の動詞化) しょうぞくをつける。よそおう。そうぞく。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「侍従仲忠、いとになくさうずきて、夜うちふけていできたり」

そう‐ずく サウ‥【装束】

※阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)四四「女のさうずくをかづけんとす」

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デジタル大辞泉 「装束」の意味・読み・例文・類語

しょう‐ぞく〔シヤウ‐〕【装束】

衣服を身に着けること。装うこと。また、その衣服。装い。いでたち。多く、衣冠束帯など、特別な場に合わせたものについていう。「旅の装束」「白装束
「四人は孔雀くざくの―す」〈宇津保・楼上下〉
家屋・道具などを飾りつけたり整えて支度したりすること。しつらえ。また、その装飾品。
「御車の―解きて」〈かげろふ・中〉
[類語](1洋服和服ころも衣料品衣料衣服衣類着物着衣被服お召物衣装ドレス洋品アパレル略服ふだん着略装軽装着流しカジュアルよそゆき一張羅街着礼服式服フォーマルウエア礼装正装既製服レディーメード既製出来合い吊るしプレタポルテ注文服オーダーメード私服官服制服ユニホーム学生服軍服燕尾服喪服セーラー服水兵服背広スーツ

そう‐ぞく〔サウ‐〕【装束】

しょうぞく(装束)1」に同じ。「つぼ―」
「―のはかまを取り寄せさせ給ひて」〈・夕顔〉
しょうぞく(装束)2」に同じ。
「参りて奏せむ。車に―せよ」〈大鏡花山院

そう‐ずく〔サウ‐〕【装束】

しょうぞく(装束)」に同じ。
「二人の婿の―」〈落窪・一〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「装束」の意味・わかりやすい解説

装束
しょうぞく

朝廷や貴族が用いる調度や威儀具などの一そろい。また衣服、武具、馬具、輿車(よしゃ)などの様式にかなった装いの組合せ。装束は元来、御帳(みちょう)台、椅子(いし)、床子(しょうじ)、茵(しとね)、畳などの座臥(ざが)具、御簾(みす)、壁代(かべしろ)、几帳(きちょう)、軟障(ぜじょう)、屏風(びょうぶ)、障子などの屏障(へいしょう)具、厨子(ずし)、棚、唐櫃(からびつ)、筥(はこ)、鏡台などの什器(じゅうき)類を正しく敷設し配置することと、庭上の幡(ばん)、旗、矛、盾、弓箭(きゅうせん)など威儀具の舗設、装備の意味を表す語であった。

 平安時代に調度の配置、室内の装飾のことを室礼(しつらい)というようになり、装束の語はおおよそ服装に関して使われる場合が多くなり、さらに「装束する」というように動詞化した用法も認められる。公家(くげ)の服装についての規範は古くは推古(すいこ)天皇11年(603)に定められた冠位十二階の制や、養老(ようろう)の衣服令(りょう)などの服制に求められる。衣服令で公服を3種に分けて礼服(らいふく)、朝服、制服とし、礼服は五位以上の者が儀式のとき、朝服は有位の者が参朝のとき着装し、それぞれ文官、武官、女官の区別がある。制服は無位の者、庶人が公事(くじ)に従うときに着用する。平安時代になって、男子の礼服は即位式の際のみで、朝服が儀式にも用いられるようになった。この礼装化した朝服は束帯とよばれ、晴装束または昼(ひの)装束ともいわれ、宿直(とのい)装束と区別した。このころから公家の衣服の身頃(みごろ)や袖(そで)など広く、大きくなり始め、非常に優雅な様式のものとなって、服装の和様化が進んだ。

 女子は儀式に臨むことが少なくなり、礼服を用いる機会がほとんどなくなって、儀式のときはかんざし領巾(ひれ)、裙帯(くんたい)を加えて礼装化した朝服を用い、晴装束とした。女子の朝服も長大化し、襲(かさ)ね着形式となるとともに、日常は裳(も)を着けず、唐衣(からぎぬ)(背子(はいし))も省略したため、これらを着装した姿を裳・唐衣ないし女房装束とよんだ。これは後世において、通俗に十二単(じゅうにひとえ)といわれている。

 束帯を簡略化したものが布袴(ほうこ)や衣冠(いかん)で、朝服に準ずる公服であるため、冠をかぶり位袍(いほう)を着用する。律令(りつりょう)制に基づく公的生活に用いられる礼服や朝服に対して、一定の規範に従うが、日常の私的生活で個人の好みによって着装するものを褻(け)の装束と称した。これには男子の直衣(のうし)、小(こ)直衣、狩衣(かりぎぬ)など烏帽子(えぼし)をかぶる姿が、女子の袿(うちき)や衵(あこめ)、細長などの姿があげられる。一日晴といって、その日1日だけ華やかに好みの色や文様の下襲(したがさね)や表袴(うえのはかま)などを着る姿を染(そめ)装束とよんだ。童(わらわ)装束として、束帯の場合でも髪形がみずらで冠をかぶらず、脇(わき)を縫わずにあけられた闕腋(けってき)の袍を用いる。そのほか童直衣や半尻(はんじり)の狩衣、童水干(すいかん)などが親しまれた。

 童女の装束には衵や汗衫(かざみ)が用いられ、年少の男女は、おおむね濃い色、小形の文様の衣服が用いられた。下級官人で行列の供奉(ぐぶ)をする随身は褐衣(かちえ)を着用し、召具装束とした。そのほか、下級官人が着る水干や退紅(たいこう)、白張(はくちょう)などは制服の流れをくむものである。女子が旅に出るときに、袿の裾(すそ)を引き上げて着装し、その形状から壺(つぼ)装束とよんだ。院政期以後流行をみた強(こわ)装束は、服装の輪郭が直線的で剛ばった調子のものをいい、従来のしなやかな線を描くものを柔(なえ)装束とよんで区別した。公家の品格を尊ぶ美意識から、自由な気分を表す染文様より、整然と反復する織文様を中心とし、さらに文様より色彩を重視し、装束の語が示すごとく、個々の色彩や文様より全体の様式美を配慮する服装といえよう。

[高田倭男]

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普及版 字通 「装束」の読み・字形・画数・意味

【装束】そう(さう)ぞく

衣裳。身じたく。〔世説新語、排調〕桓大司馬(温)に乘じて獵(れふ)せんと欲す。~眞長(劉)其の裝束の單なるを見て問ふ、老此れを持して何を作(な)さんと欲すると。桓曰く、我し此れを爲さずんば、(けい)が輩、亦た(なん)ぞ坐談することを得んと。

字通「装」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「装束」の意味・わかりやすい解説

装束【しょうぞく】

〈そうぞく〉とも読む。物を飾ること。中古以来公武男女の公服,すなわち束帯衣冠,直衣(のうし),狩衣(かりぎぬ),直垂(ひたたれ),裳(も),唐衣(からぎぬ)等を身を飾るという意味で装束と呼び,また朝廷の公事(くじ)儀式が行われる際,式場を装飾することも装束するという。
→関連項目狩衣立涌朝服腹巻有職文様

装束【そうぞく】

装束(しょうぞく)

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