蜷川親元(読み)にながわちかもと

精選版 日本国語大辞典 「蜷川親元」の意味・読み・例文・類語

にながわ‐ちかもと【蜷川親元】

室町時代武士。親当(ちかまさ)の子。官は右衛門尉法名は道寿。号は不白軒。幕府政務に参与し、政所執事代として執事伊勢貞宗を助けた。「親元日記」は室町幕府政治の基本的史料。永享五~長享二年(一四三三‐八八

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朝日日本歴史人物事典 「蜷川親元」の解説

蜷川親元

没年:長享2.5.25(1488.7.4)
生年:永享5(1433)
室町時代の幕府吏僚。政所代蜷川親当の子。新右衛門尉。道号は不白軒,友石。若年より政所執事伊勢貞親・貞宗父子に仕え,寛正6(1465)年には御庭水番,次いで御物奉行を務め,翌年9月に貞親が失脚すると近江に没落したが,文明5(1473)年6月許されて上洛,貞宗のもとで政所代に就任した。将軍家の家産を司り,訴訟文書の事務処理などにも当たった。『親元日記』は寛正6,文明5,9,10,13,15,17各年が残存し,この間の動静を伝える。父親当が禅僧一休宗純と親交があり,一休の死去を記録していることは有名。能書家をもって知られ,将軍足利義政の命で古文書などを書写したことが知られる。また多賀高忠と並んで武家故実に通じ,文明15年3月には自ら犬追物を興行した。三条西実隆は,少年時に親元の恩を受けたこと,親元の死去に際して親元筆の書状の裏に経文を書いて遺族に送ったことなどを日記に記している。<参考文献>坂井誠一『遍歴武家

(今谷明)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蜷川親元」の意味・わかりやすい解説

蜷川親元
にながわちかもと

[生]永享5(1433)
[没]長享2(1488).5.25. 京都
室町時代の武士。父は親当 (→蜷川智蘊 ) 。新右衛門尉。法名,道寿。伊勢貞宗の被官として室町幕府8代将軍足利義政に仕え,文明5 (1473) 年8月7日父の跡を継いで政所代に就任,幕政に参画。三条西実隆とも親交があり,同 10年には実隆の十首和歌興行に招かれて和歌を詠じ,また近江延寿寺養坊で和歌百首を詠じるなど,歌人としてもすぐれ,多くの作品を残している。日記『親元日記』は幕府政治の根本史料として重視されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蜷川親元」の意味・わかりやすい解説

蜷川親元
にながわちかもと
(1433―1488)

室町中期の幕臣。親当(ちかまさ)の子、新右衛門尉(じょう)と称し、号を不白(ふはく)、法名を道寿(どうじゅ)という。1473年(文明5)政所(まんどころ)執事伊勢貞宗(いせさだむね)の代官として政所代に任じられた。故実に通じ、三条西実隆(さんじょうにしさねたか)らの公家(くげ)とも親交があったので、幕政に重きをなした。その活動の跡は『親元日記』や政所の公用記録というべき引付(ひきつけ)によって知られ、いずれもこの時期の政治・経済史料として貴重である。また和歌・連歌をよくし、『新撰菟玖波集(しんせんつくばしゅう)』に採録されているほか、筆跡にも優れ、書写した典籍も多い。

[桑山浩然]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「蜷川親元」の解説

蜷川親元 にながわ-ちかもと

1433-1488 室町時代の幕府官僚。
永享5年生まれ。蜷川智蘊(ちうん)の子。室町幕府の政所(まんどころ)執事伊勢(いせ)氏につかえ,政所代をつとめる。和歌,連歌,書にすぐれ,故実にも通じた。「親元日記」は当時の幕政を知る史料として貴重である。長享2年5月25日死去。56歳。号は不白。法名は道寿。

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世界大百科事典(旧版)内の蜷川親元の言及

【蜷川氏】より

…親当(ちかまさ)は智蘊と号し,幕臣としてより連歌師として著名で,二条良基と宗砌(そうぜい)の中間に位置する人物として知られる。親当の子親元(1433‐88)は伊勢貞宗の被官として8代将軍義政に仕え,応仁の乱前後の政情を記した日記《蜷川親元日記》を残し,親元の子親孝(?‐1525),曾孫の親俊(?‐1569)も《蜷川親孝日記》《蜷川親俊日記》を残す。政所の政務処理の過程で作られる訴状や裁許状の控は〈賦引付(くばりひきつけ)〉〈御判(ごはん)引付〉などと呼ばれるが,売買,貸借,質入れなど政所所管事項の実務を記録するこれら記録は,すべて蜷川氏によって筆録されたもので,中世後期の経済界,とりわけこの時期に頻発する徳政一揆の背景を知りうる史料として貴重である。…

【蜷川親元日記】より

…室町幕府8代将軍足利義政の時代に政所代(まんどころだい)をつとめた蜷川親元(1433‐88)の日記。親元は名筆として著名で,早い時期からその日記は観賞の対象とされたため散逸した部分が多いが,今残るところは1465年(寛正6)および1477年(文明9)より86年の一部である。…

※「蜷川親元」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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