自由民主党(イギリス)(読み)じゆうみんしゅとう(英語表記)Liberal Democrats

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由民主党(イギリス)」の意味・わかりやすい解説

自由民主党(イギリス)
じゆうみんしゅとう
Liberal Democrats

イギリスの政党。略称LD。1988年に自由党社会民主党(Social Democratic Party、略称SDP)が合同して成立。自由党は19世紀以降保守党とともに二大政党の一角を占めていたが、第一次世界大戦後、内部分裂と労働党の台頭のため勢力が衰えた。社会民主党は、労働党の左傾化への不満から同党を離党した国会議員が中心となり、1981年に結成された。元蔵相・ヨーロッパ委員会委員長のジェンキンスRoy Jenkins(1920―2003)が初代党首を務めた。社会民主党の結党直後から両党は連携を図り、二大政党に支配されるイギリス政治の打破を目ざしたが、小選挙区制のもとで党勢は伸び悩んだ。1988年3月に両党は正式に合同して社会自由民主党(Social Liberal Democrats、略称SLD)が成立、翌1989年に自由民主党と改称した。2010年総選挙の結果、どの政党も過半数議席を有さない宙吊(ちゅうづ)り議会が誕生すると、選挙制度改革をめぐる国民投票実施を条件に、イギリスでは第二次世界大戦後初となる連立政権を保守党と結成した。保守党党首のキャメロンが首相に就任し、自由民主党党首のクレッグNick Clegg(1967― )は副首相として入閣した。2011年の国民投票で選挙制度改革が否決された後、連立与党間の関係は悪化し、2015年総選挙で保守党が単独過半数の議席を獲得したため、連立は解消された。

 結党以来、すべての下院総選挙で二大政党に次ぐ第3位の得票率を記録しているが、支持が地理的に分散しており、連立政権の結成により支持率が下落したこともあって、議席数では2015年以降二大政党とスコットランド国民党(Scottish National Party、略称SNP)に次ぐ第4位にとどまっている。政策的には、経済運営をめぐる左右の対立軸では二大政党の保守党と労働党の中間に位置し、個人の自己決定と伝統的な生活様式をめぐる対立軸では、緑の党と並んでもっともリベラルな立場をとっている。国制改革の党であり、選挙制度改革に加えて、上院への公選制の導入や地方分権を推進している。国際協調やヨーロッパ統合にも積極的で、2016年に行われたEU(ヨーロッパ連合)残留の是非をめぐる国民投票では残留を支持した。管理職専門職熟練労働者の間での支持率が比較的高いが、肉体労働者や自営業者からも一定の支持を集めるなど、支持者社会階層は多様である。地理的には「ケルト周縁部」とよばれるスコットランドやイングランド南西部での支持が比較的多い。

[池本大輔 2023年6月19日]

『梅川正美・阪野智一・力久昌幸編著『イギリス現代政治史』第2版(2016・ミネルヴァ書房)』『成廣孝「自由民主党:再生と転機」(『現代イギリス政治』第2版所収・2014・成文堂)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android